記者C:国連総会の直前のタイミングとあって、当の外務省の幹部たちでさえ当日まで林大臣は留任と思いこんでました。改造当日(9月13日)は外務省で岡野正敬・事務次官がオーストラリアの大使と面談する予定があったが、大使がやって来たときには大臣が交代すると聞かされた省内はパニック状態だったそうです。
記者B:岸田総理は交代の理由を聞かれて「外交は首脳外交が大きなウェートを占める」と言った。外交は自分がやるからいいんだというわけだが、説明になっていない。後任の上川陽子・新外相はハーバード大学大学院に留学し、米国上院議員の政策立案スタッフを務めた経験もあるというが、外交経験はない。いきなり外相会議の議長というのはいくらなんでも荷が重い。
記者C:総裁派閥の宏池会(岸田派)には、来年の自民党総裁選に向けてまとめ役がいない。総理は同派座長でもある林さんを派閥に戻して閥務を担わせることにしたといわれてますが、本当のところは、女性大臣を過去最多の5人にするにはポストが足りなかった。かといって他派の大臣枠を削ると不満が出るから、数合わせで岸田派の林外相がはじき出されることになったということでしょう。
記者A:総理は改造前日の昼前、官邸で林さんと30分ほど話し込んだ。そこで相当激しくぶつかったようだ。
記者B:衝突した? 林さんは派閥に戻ることを納得したんじゃない?
記者A:表向きは2人で「宏池会の未来」について話し合ったことになっている。が、林さんはその席で総理から、「どうしても降りてほしい」と外相交代を告げられても納得しなかった。そこで総理は、来年の自民党総裁選で自分が再選すれば、その次の4年後の総裁選には宏池会から必ず林さんを擁立すると確約したそうだ。つまり政権禅譲すると。同じ宏池会内での総理たらい回しの密約だから、「宏池会の未来」の話には違いないんだがね(苦笑)。
記者D:林さんは総理と会った後、厳しい表情で官邸を出て行きましたよ。
記者A:岸田内閣が4年後まで持つと思っていないからじゃないか。
(第2回につづく)
※週刊ポスト2023年10月6・13日号