1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、秋のGI開幕戦と、馬の適性にあう「路線」についてお届けする。
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9月になって競馬が北海道や新潟、小倉から中山と阪神に戻って秋華賞や菊花賞のトライアルが始まり、最終日のスプリンターズステークスを迎えるころになると、いよいよだな、という気分になります。翌週からは東京・京都開催がスタート、2週目の秋華賞から暮れのホープフルステークスまで続くGIシリーズの開幕を告げるレースです。ちなみにこの日はフランスで凱旋門賞もあるので、ファンは夜も楽しめるのではないでしょうか。
1分そこそこであっという間に勝負が決まる「電撃の6ハロン(1200m)」戦。昨年は1、2着が同タイム、最下位まで1.1秒差しかない大激戦でした。夏の間に函館や札幌、小倉などで行なわれた1200mの重賞で頭角を現してきた馬やイキのいい3歳馬と、3月の中京競馬場で行なわれた高松宮記念の上位馬によるレースとなります。
かつて日本の競馬番組はそれぞれの馬の適性に合う「路線」というものが確立されていなかったように思います。むしろ「格」中心のようなところがあって、3200mの天皇賞(春)に出た馬が1600mの安田記念に出たりしていました。それで上位に来ているから大したものではあるのですが、短い距離専門の馬や古馬牝馬は軽視されていると言われていました。
スプリンターズステークスも僕が騎手になった頃はまだGIIで3月に行なわれており、1988年には自厩舎のダイナアクトレスが的場均騎手の騎乗で勝っています。彼女は1800mの毎日王冠を勝っているし、2400mのオークスや2000mの天皇賞(秋)でも好走しているようにスプリンターとはいえなかったのかもしれません。
その後徐々にさまざまな路線が整備され、スプリンターズステークスがGIになり、古馬牝馬やダートのGIも創設された。そういった路線の確立によって適性が明らかになり、日本馬が世界でも伍して戦えるようになったのだと思います。