僕は2001年にトロットスターで3月の高松宮記念と9月のこのレースを勝っています。しかし6月の安田記念では14着、11月のマイルチャンピオンシップでは12着。どちらも人気でしたが距離が延びると結果を出せなかった。それなりの時計で走ってはいるので、1600mを得意とする強い馬が他にいた。つまり彼自身はマイラーではなくスプリンターだったということなのでしょう。お母さんは藤沢和雄厩舎にいたカルメンシータという馬で、やはり勝ち星は1200mまで、1400mは2着まで、1600mになると掲示板にも載らない馬でした。
ほとんどの馬がデビュー前に大目標とするのはクラシック。デビュー戦で1200mを使って勝ったら、距離を少しずつでも延ばしていきたいと考えたいところですよね。2歳時や3歳の早い時期にスプリンターだと決めつけると使うレースが狭まってしまう。血統や気性などから多少の判断はできますが、やはり何戦か使ってみないとわからない。試行錯誤の上でスプリント路線を歩むのではないでしょうか。
スピード化がどんどん進む時代、このレースからも次代を担う種牡馬が出てくるかもしれません。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2023年10月6・13日号