“番組表”の意味がわからない
改編期がズレている2つ目の背景は、視聴者の“番組表”に対する意識の変化。
以前は「新聞、テレビ誌、さらにウェブメディアの“テレビ欄”を見て視聴する番組を決める」という人が多数派を占めていました。しかし、録画機器が進化し、配信視聴が一気に普及したことで、すでに「見たいときに見る」という視聴習慣が主流になりはじめています。
もちろん民放各局は今なおリアルタイムで見て視聴率を獲得していかなければいけないのですが、テレビに限らずコンテンツの全体数が増える中、「番組表や編成という昔からのやり方ばかりこだわっていたら未来はない」という危機感が増しているのは間違いないでしょう。
現在は特に若年層を中心に、「番組表は見たことがない」「見る番組はランキングかクチコミで決める」という人が増えています。彼らから見たら、「春と秋に番組を入れ替える意味がわからないし、そもそも興味がなくどうでもいい」のではないでしょうか。
さらに、民放各局の中には、「特番を連発したり、レギュラー番組をなかなか放送しなかったりなど、自ら番組表を乱してきた」という自覚があるだけに、「改編期にしばられすぎずに開始や終了のタイミングを決めていこう」という考え方が少しずつ広がっているのかもしれません。
長年テレビを見続けてきた中高年層の中にも、「最近は何曜日、何時の、どの局で、どんな番組を放送しているかほとんどわからない」という人が増えています。テレビ局にとって番組改編は一大イベントですが、すでにかつてのようなお祭りムードはなく、今後もこのようなズレはジワジワと広がっていくのではないでしょうか。ただ、それは決してネガティブなことではなく、時代や人々のニーズに合わせた自然なものに見えます。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。