そうなると、経済対策の中身もなりふり構っていない。首相は閣議に先立って経済対策の柱を表明した9月25日の会見で、パート勤務などで一定の収入を超えると手取りが減る「年収106万円の壁」支援のために労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金の創設を発表し、「来月から実施してまいります」と表明した。これには政治アナリストの伊藤惇夫氏も驚く。
「経済対策をまとめるのはこれからだし、補正予算も編成していない。役所からすれば、9月末に言われて10月実施など無理難題も甚だしい。こんな極めて異例な方針を出したのは、解散前に一つでも有権者にアメを与えておこうという選挙対策以外の何物でもないでしょう。10月中か、あるいは11月の解散を考えていることがはっきりわかる」(伊藤氏)
岸田首相は解散が取り沙汰されていた今年6月の通常国会のさなか、「今国会での解散は考えていない」と異例の表明を行なって解散を断念した経緯がある。それだけに、「今度こそ解散総選挙をやり遂げる」という不退転というより悲壮な決意を感じさせる。
※週刊ポスト2023年10月20日号