♦中国人観光客の観光スポットに
大阪府警の摘発が功を奏し、「アメリカン通り」の立ちんぼが減少。一見そんな解釈に帰結しそうだが、彼女らが足を洗った訳ではないとアヤは説明する。
「梅田から難波に場所を移しただけで辞めてはいません。客が捕まらないと、仲良しグループの女の子たちが『難波に行こう』って移動するんです」
前職は有名ブランドのショップ店長。給料も「手取りで20万後半ありました」とアヤは打ち明ける。最大の疑問は風俗未経験の彼女が、なぜ立ちんぼとなって街角に立つことを決意したのかだ。アヤもまた、元交際相手の派手な金銭感覚によって貯金を失うどころか、借金まで背負った。元交際相手が彼女名義で勝手に借りた、不可解な借金まで負担したという。そこで弁護士に債務整理を依頼。残った借金はそれでも700万円に及んだ。
「毎月、利息の返済だけで20万。昼職だけでは首が回らないので、まずはマッチングアプリでパパ活の相手を探したんです。食事をするだけで月に20万円の手当てでしたが、それも長続きせず、昼職を退社して『アメリカン通り』に立つと自分で決めたんです。ここには知り合いもいないし、リスクも承知の上です。自分の意思で立つ、立たないと決められるのが良いんですよ。
やっぱりメンタルにもそれなりの負担がありますし、罪悪感に苛まれて落ち込んだりもします。辛いから行きたくないという選択肢。私にとって、それが大切でした」
「リスクを承知の上で」とはいえ、危ない経験もした。客と入ったホテルで飲料水に薬を盛られて意識が途絶え、目が覚めると半裸で数時間が経っていた。アヤは所持金を持っておらず、部屋代が払えなかったため、ホテルのフロントに相談してコンビニにお金を下ろしにいった。当然、両親に相談できるわけもない。
「私がNGなのは20代の方。お金がなかったと言い出す。金銭トラブルもそうだし、若い人は決まって問題が起こるから今は拒絶してます。私にとって良いお客さんは中国人観光客。丁寧ですし、チップもくれます。驚いたのは100万円のチップをくれた日本在住の中国の方。初めて帯をしたお札を目にして感激した」
この「アメリカン通り」は東アジア圏の一部では有名スポットとなり、韓国や台湾から訪日した観光客が訪れるのだという。
「外国人観光客とは『ポケトーク』や簡単な英語で交渉をしてます。『わざわざこの近くのホテルに宿をとった』という方もいるぐらいで、飛田新地は外国人の入店がダメだったりするから、こっちのほうに流れているみたい」
「アメリカン通り」で立って、すでに9か月あまり。アヤの借金は完済まで残り300万円を切った。いつまで続けるのか──そんな問いに対してアヤは最後にこう語った。
「そろそろ潮時だと思うんで来週を最後に、水商売に鞍替えします」
取材を通じて知り得た情報によれば、大阪府警が最も注視しているのは家出少女などの未成年の立ちんぼであるという。この取材の翌日、記者は逮捕現場に遭遇した。その緊迫の現場では少女たちが──。
(後編に続く)
♦取材・撮影/加藤慶