「その手帳は……?」
島田さんと陽子さんは顔を見合わせた。
「詩織から聞いた話を出来るだけ書くようにしていたんです」
「なるほど……」
答えながら今度は、私と藤本が顔を見合わせる番だった。これは相当証言者として優秀だ。これほど信頼のおける話が聞けるとは想像もしていなかった。Aとのトラブルに参っていた詩織さんはこの友人達に何度も相談していたのだが、そのたびに彼らにメモを取ってくれと頼んでいたというのだ。
島田さんは続けた。
「最初は車のセールスマンだと言って詩織に近づいてきたんです。でもそれは嘘でした。身長が一八〇センチくらいある細身の男で……」
陽子さんが身振り手振りを交えて話し始める。
「髪は天然パーマで、少し染めてました。芸能人で言うと、羽賀研二と松田優作を足して二で割ったような顔かな。お酒はほとんど飲まなくて、タバコも吸わない」
「ちょっと待って下さい」私は思わず口を挟んでいた。「殺害現場で目撃されたのは身長一七0センチ、短髪、小太りの男ですよ。Aが身長一八〇で細身というんじゃ、別人と言うことになるじゃないですか」