2023年は “貧乏主人公”ドラマイヤー?
自分が視聴したドラマだけでも、2023年は“貧乏主人公”が多く取り上げられてきている。なかには昔ながらのコメディタッチもあるが、どちらかというと身につまされるような貧困描写が多い気がする。
春ドラマの『日曜の夜ぐらいは…』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では、主人公の岸田サチ(清野菜名)が車椅子生活の母をアルバイトで支えながら暮らす。貧困ゆえにカフェに行きたくても行けず、コンビニで買う高いアイスが親子のご褒美だった。『王様に捧ぐ薬指』(TBS系)の羽田綾華(橋本環奈)も、実家が貧乏のためにセレブと契約結婚。ただ『日曜の夜ぐらいは…』に比べると、主人公の貧しさの描写はややネタ扱いだった印象だ。
夏ドラマにも“貧乏主人公”が見られた。『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)の主人公の蒼井夏海(森七菜)の実家は、けして儲かっているとはいえない飲食店。父親は人がよく、すぐに金を他人に貸してしまう。そのため、なっつんこと夏海は働き詰めの生活だった。家族の世話をして、朝からSUPのコーチをして、昼からは飲食店でランチを提供して、ディナータイムまで働く。ついには自分を捨てて出ていった母親にも、金をたかられる。
『癒やしのお隣さんには秘密がある』(日本テレビ系)の主人公の蓬田藤子(田辺桃子)は実家に仕送りをする、高卒の会社員。古いアパートに住み、慎ましやかな暮らしを送っていた。そしてストーカーに付きまとわれることに。
現在放送中の『マイ・セカンド・アオハル』(TBS系)でヒロインの白玉佐弥子(広瀬アリス)も実家は裕福ではないうえ、学歴もなく、貧乏生活を送る30歳の設定だ。ここから大学に通い、恋をして生活を豊かにしていく。
いわゆる普通の家庭ではなく、いつの間にかドラマには貧困家庭が増えてしまったようだ。本人が貧しいだけならまだしも、働く子どもをよすがとする親が描かれていることも見逃せない特徴である。
自宅で満足に食事ができない子どもたち
なぜここまで主人公たちは貧しいのか。おそらく、それが日本のスタンダードになりつつあるからだ。
厚生労働省によると、日本の相対的貧困率は1985年に12.0%だったが、じわじわと上昇を続け、2021年には15.4%だった。17歳以下の子供を育てるひとり親家庭にいたっては、近年のピークだった1997年の63.1%からだいぶ減っているものの、いまだ44.5%と半数近い世帯が貧困状態(可処分所得が年127万円未満)で暮らしている(厚生労働省「2022年国民生活基礎調査の概況」より)。