芸能

【ドラマが描く貧困】『北の国から』2万円、『サンクチュアリ』は5000円…激減した親から子への餞別 貧乏主人公ドラマの変化の背景

『北の国から』で黒板五郎を演じた故・田中邦衛と、『サンクチュアリ』で主人公の父親役を演じたきたろう(時事通信フォト、ASH&Dホームページより)

『北の国から』で黒板五郎を演じた故・田中邦衛と、『サンクチュアリ』で主人公の父親役を演じたきたろう(時事通信フォト、ASH&Dコーポレーションのホームページより)

 生い立ちの貧しさに負けず、艱難辛苦の果てに成功を掴む──。古今東西、あらゆるジャンルの作品で取り入れられてきた物語の定型だが、ドラマオタクのエッセイスト・小林久乃氏は、最近のテレビドラマが描く貧困の描写に違和感があるという。その理由を小林氏が綴る。

 * * *
 遅ればせながら、Netflixで今年5月に配信がスタートした『サンクチュアリ─聖域─』を見た。この作品にスタッフとして参加していた知人によると、制作中は主役の俳優の知名度などに対して周囲から疑問の声が上がっていたうえに、制作陣も「本当に売れるのか」とやや不安があったという。それが配信と同時にNetflixの国内1位、世界でもトップ10入りするなど、「まさか?」というほど番狂せの世界的ヒットとなった。

 ドラマの舞台になったのは相撲界。北九州出身でヤンチャな小瀬清(四股名・猿桜。一ノ瀬ワタル)が、スカウトを受け、金を稼ぐために力士となることを決意。紆余曲折ありながらも、角界で成り上がる様子を描く。稽古や取り組みなどリアリティあふれる多くのシーンは、老若男女問わず人気を博した。動画配信サービスがよく見られる年末年始の時期には、また話題に上がってくることだろう。

 そんな『サンクチュアリ』のあるシーンに衝撃を受けた。小瀬清がいよいよ上京する日。新幹線のホームに見送りに来た父親の浩二(きたろう)から渡されたのは、封筒に入ったしわくちゃの5000円札1枚だった。

「たったの……、ご、5000円!?」

 思い起こせば、『北の国から ’87初恋』(フジテレビ系列・1987年)で黒板五郎(田中邦衛)が用意したお金は、泥のついた1万円2枚(ピン札)だった。上京していく純(吉岡秀隆)を乗せてもらうトラックドライバーに、謝礼として渡した2万円。でもドライバーは「おまえが持っていろ」と純に返す──。ドラマ史に残る屈指の名シーンだ。

 今から36年前に放送されたドラマで、北海道の富良野で自給自足に近い生活をする家庭でさえ、息子の旅立ちには2万円を捻出したのに、2023年はたったの5000円……。東京都内のちょっとした居酒屋で飲み食いをしたら、数時間で消えてしまう金額だ。2つの時代が持つリアリティのギャップに、なんだか胸が苦しくなった。

 このシーンをきっかけに、最近の地上波で放送されるドラマは“貧困主人公”が多いことに気づいた。

関連記事

トピックス

インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
PTSDについて大学で講義も行っている渡邊渚さん(本人提供)
渡邊渚さんが憤る“性暴力”問題「加害者は呼吸をするように嘘をつき、都合のいい解釈を繰り広げる」 性暴力と恋愛の区別すらできない加害者や擁護者への失望【独占手記】
週刊ポスト