【週刊ポスト連載・医心伝身】原因が特定できない慢性腰痛は骨盤が関与していることがある。というのも骨盤が前傾や後傾していると脊椎が弯曲し、巻き肩・猫背になるからだ。結果、肩から背中、腰の筋肉が硬くなってアンバランスになり、腰痛に繋がる。近年、骨盤が垂直に立つよう設計された椅子が開発された。1日1時間程度座ることで骨盤が正しい位置に矯正され、腰痛が徐々に緩和、姿勢や呼吸の改善も期待される。
3か月以上続く腰痛は慢性腰痛とされ、国内の患者数は1000万人強(2018年調査)と推計されている。慢性腰痛は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腫瘍など原因が特定できる特異的腰痛と、特定できない非特異的腰痛に分けられる。
また、近年では長時間のデスクワークや前傾姿勢でのスマホ操作などによる腰痛患者が増加、これら慢性腰痛の約85%も原因が特定できない非特異的腰痛といわれている。
アレックス脊椎クリニック(東京都世田谷区)の吉原潔院長に話を聞いた。
「昔のように、畳に正座をしていた時代は骨盤を垂直に立てた正しい姿勢で座っていました。ところが、ソファや椅子に座る生活が一般的になると、猫背になる人たちが増えました。猫背は上半身(胸椎)の問題と考える方が多いのですが、根本の原因は腰です。骨盤が後傾するので猫背になり、そのまま机に向かうと、両肩が前方に傾斜する巻き肩にもなります。巻き肩・猫背になってしまうと、次第に肩や背中にコリを生じ、ついには腰痛に繋がるわけです」
骨盤を垂直に立てるには坐骨を意識することが重要だという。坐骨は骨盤の一番下の部分で、尻の両側に触れる硬い隆起が座る際に体を安定させる役割を担う。
坐骨の後ろ側が椅子の座面に着くと骨盤は後傾し、座骨の前側が着けば骨盤は前傾する。そのため坐骨の中央が座面に着くようにすれば、骨盤は真っすぐに立つ。