中国語圏でLINEのように広く使われているWeChat(微信)だが、内容の検閲がされているためアメリカではTikTokと並んで安全保障のうえで問題があると指摘されている(EPA=時事)

中国語圏でLINEのように広く使われているWeChat(微信)だが、内容の検閲がされているためアメリカではTikTokと並んで安全保障のうえで問題があると指摘されている(EPA=時事)

 あくまでも「広告を発信するSNSアカウントを作成する人を集める告知」を仕事として請け負っただけで、趙氏は広告そのものについては関知していないらしい。中国人学生を集めてアルバイトを紹介しただけで、その仕事内容のことは詳しく知らないが、その後、ネットで起きていることなどを見ておおよその推測ができたのだと主張する。

 趙氏による証言がなくとも、問題のSNS投稿には繁体字が使われていたり、天皇陛下がフェイクの素材として扱われていたり、確かに日本人の所業と考えるには難しい。だが、中国系の犯行とも、中国系に成り済ました犯行とも言える可能性はまだ残る。もはや何が真実で何が嘘なのかわからない、混沌とした状況が作られつつある。

ディープフェイク広告をクリックした先

 では、実際にこうした「ディープフェイク」に騙されるとどうなるのか。

 X(旧Twitter)に表示された、ある日本の著名人が素材となったディープフェイクとみられる動画が使われている「投資を促す」広告をクリックしたところ、すぐに別のSNSで日本人名のユーザーと「友だち」になって繋がるように誘導された。このユーザー、日本人名ではあるものの、筆者との会話で飛び出す日本語は間違いだらけで、おそらく翻訳ソフトなどを使っているものと推測できる。さらにこの人物は「投資の先生を紹介したい」と、また別の日本人名のユーザーを紹介してきたのである。

 その「投資の先生」と繋がるいや否や、投資で儲けることがいかに簡単かなどの説明を、やはり辿々しい日本語で進めていった。すぐに興味を示さず、かといって無関心ともいえない程度の反応を心がけ、こちらが「投資」に出資することを渋っていると、今度は別のグループチャットに入れられた。

 そこには、100名近くのユーザーがいて、そのほとんどが日本人名かつ、フルネームだ。これらのユーザーは、筆者の見ている前で「投資の先生」を天才だと持ち上げ、もっと投資をしよう、明日にはこの株が伸びるなどの会話を展開していくのだが、そもそも偽広告が入口になっている偽の投資話である。偽広告の先に「本当の儲け話がある」可能性はゼロだ。冷静にグループチャットの内容を見返すと、その場の雰囲気で筆者を騙そうとしていることがわかり、会議室に集合させて高揚感を与え判断力を鈍らせて物品を買わせるやり方、まさに「催眠商法」の手法そのものだった。

 筆者があまりに消極的だったためか、はたまた怪しまれたからかは判然としないが、結局「お金はないし投資もしない」と告げると、グループチャットから追い出された。最初にやり取りを始めた日本人名のユーザーから「八カ(※口へんに戛、中国語でバカの意味)」とメッセージが届き、その後、ブロックされた。

 筆者が「金を出す」と言っていれば、パソコンの遠隔操作アプリ入れるよう指示されたり、架空の投資サイトに案内され、投資と称して金を要求されたはずである。このような相手に一旦金を奪われてしまうと、ほぼ100%、金は戻ってこないと警察関係者も口を揃えて言う。犯行グループは複数かつ分業化されており、さらには海外に拠点を設けている場合が多く、実質的に捜査不能なのだ。

あわせて読みたい

関連キーワード

関連記事

トピックス

デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
維新に新たな公金還流疑惑(左から吉村洋文・代表、藤田文武・共同代表/時事通信フォト)
【スクープ!新たな公金還流疑惑】藤田文武・共同代表ほか「維新の会」議員が党広報局長の“身内のデザイン会社”に約948万円を支出、うち約310万円が公金 党本部は「還流にはあたらない」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《ほっそりスタイルに》“ラブホ通い詰め”報道の前橋・小川晶市長のSNSに“異変”…支援団体幹部は「俺はこれから逆襲すべきだと思ってる」
NEWSポストセブン
東京・国立駅
《積水10億円解体マンションがついに更地に》現場責任者が“涙ながらの謝罪行脚” 解体の裏側と住民たちの本音「いつできるんだろうね」と楽しみにしていたくらい
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン