垣根がない
今作は、33歳の趣里と7歳差の水川が母親役にキャスティングされたことも話題となった。『ブギウギ』の制作統括を務める福岡利武氏が語る。
「あまり年齢の変わらない趣里さんの母親役を演じることについて、水川さんも撮影に入る前は少し気にしていました。でも蓋を開けたら、水川さんのツヤ役は全く違和感がなく、“大阪のお母ちゃん”でした。夫役の柳葉敏郎さんとは年齢差がありますが(22歳差)、息の合った夫婦の演技を見せてくれています」
なぜ水川に白羽の矢が立ったのか。実は『ブギウギ』の脚本を担当する足立紳氏が監督・脚本を務めた映画『喜劇 愛妻物語』(2020年公開)で水川は母親役を好演していた。
「水川さんは足立さんの脚本と相性がよく、彼の意図や狙いを上手に表現します。それで『ブギウギ』でもヒロインの母親役として水川さんが自然と浮かびました。期待通り、愛情たっぷりでしっかり者のお母ちゃんを自然に演じています。
水川さんはキャストやスタッフと垣根なく、いつも明るく喋っています。その空気のまま本番の撮影に入るので、ヒロインの家族の温かさやスズ子の実家の銭湯に集まる人たちの愉快な感じが画面から自然に伝わってくるのだと思います」(福岡氏)
東京編からはツヤの登場が少なくなり、寂しい限りだと田幸氏は語る。
「しかも久しぶりに登場したツヤは病に臥せって、不穏な感じが漂いました。この先、スズ子が『大好きなお母ちゃんに会いたい』と帰郷するか悩む展開になるかもしれません」
お母ちゃんに会いたい──。スズ子だけでなく、私たちも恋しいのだ。
※週刊ポスト2023年12月1日号