警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、取材予定だったヤクザ突然、逮捕されたときの顛末と残された謎について。
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早朝にスマホが鳴った。電話をかけてきたのは関東を拠点に活動している指定暴力団の関係者D氏だ。早朝から彼が連絡してくることは滅多にない。いったい何が起こったのかと電話に出た。
「緊急連絡です」というD氏の大きな声がスマホから響く。関係している組が他の組織に襲撃されたのか、親分が何らかの罪で逮捕されたのか、それとも……と咄嗟にいくつものケースが脳裏をよぎり、○○組の幹部が△△組の事務所にミニバンで突っ込んだ動画や、××組の組員が駅で刺されて血だらけになっていたシーンを思い出す。
「何が起こったのか」と尋ねると、D氏は「逮捕されました」と答えた。逮捕されたというのに、なぜか声が明るい。逮捕されテンションが上がってしまったのかと思ったが、まさか逮捕されたという本人が、警察署から携帯でこちらに電話してくることもあるまい。「逮捕?誰が」と重ねて聞くと、「またムショに逆戻りですよ」とD氏がいう。
そこでようやく話がつながった。彼の紹介で某暴力団の組員Yに、近々話を聞くことにしていたのだ。そのYが昨夜、逮捕されてしまったという。留置によってスマホが取り上げられる前に、D氏の所に電話があったようだ。「取材できなくなったな」とD氏はいうが、ヤクザを取材しているとこういうことは時々起きる。
そのD氏も以前、約束した場所に現れなかったことがある。暴力団関係者は基本的に、カタギである一般人との約束はきちんと守る。ルールが厳しい組織で生きているため、よほどの事がなければ約束事をドタキャンすることはない。予定時刻に遅れそうなら、きちんと遅れると連絡を入れてくる。だがその日はいくら待ってもD氏は来なかった。携帯を鳴らしてもつながらない。そのうち携帯の電源は切られてしまった。
翌朝になっても携帯の電源は切れたままだ。こうなると可能性は2つしかない。下手を打って他の組の誰かに拉致されたか、もしくは警察に逮捕されたかだ。D氏も「ヤクザに電話して、電源が入っていない状態が数日続けば、そいつは死んでいるか、逮捕されていると見て間違いない」と、連絡が取れなくなった知人について話していたことがある。この時ばかりはD氏の身の安全を思い、警察に逮捕されていてほしいと願った。案の定、D氏は詐欺容疑で逮捕されていたが、勾留期間が終わったところで容疑が晴れ、釈放されてきた。