『「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと』(サンマーク出版)より

避難民キャンプの子どもたちと交流する村田氏(写真/MSF提供)

 外資系とはいえ、社員はほぼ全員日本人。英語に苦手意識があった僕は、社内の外国人からいつも逃げまくっていた。

 だが、いよいよ人生で英語を勉強しなければいけなくなった。それが、自分がどうしてもやりたい仕事の必須条件になってしまったからだ。

 テスト嫌いの僕は、英検やTOEICなどを受験するための座学は好きになれなかった。大学受験の延長のような気がして吐き気がした。

 そこで僕が通ったのが、表参道にある「我究館」の姉妹校の「プレゼンス」という英語学校のスピーキング・コース。

 もちろん単語と文法のインプットは必要なのだが、それは自分の言いたいことをアウトプットできるようにするため。そこでは自分の言いたいことを英語で話せるようになるためのメソッドがそろえられてあり、テスト勉強ではない学習法にひかれた。その学習法を僕は自分流に応用した。

 当時お昼の時間帯に放送されていたテレビ番組に、ゲスト出演者が大きなサイコロをふって、出たテーマに基づいてトークを展開するというものがあった。

 それを学習用にマネしたのだ。

 まず、東急ハンズで色の違う小さなサイコロを2つ購入。A4の紙に縦軸と横軸を設け、それぞれ6つずつに分けてマスをつくる。マスにそれぞれテーマを書き入れると合計36のテーマ表が完成する。

 テーマは「私、最近○○なんです」「私の恋バナ」など。そして、縦軸用のサイコロと横軸用のサイコロをふり、出た目の数に応じたテーマについて英語で話せるよう、繰り返しトライしたのだ。

2か月で英語を克服! サイコロトークの応用戦略とは?

 キッチンタイマーを机に置き、出た目の数に応じたテーマを5分間英語だけで話す練習を何十回もした。

 はじめは、10秒ともたない。日本語で言いたいことに自分の英語力が追いつかないのだ。まず、単語が出てこない。そのときになにを言えなかったのか日本語でメモを取り、辞書で調べる。その単語と文章を声に出して記憶。そしてもう一度、同じテーマで同じ内容を話す。そうすると、少なくともさっき詰まったところまで10秒は英語が続くようになる。でもまた、20秒目ぐらいですぐに詰まる。そこでまた、なにが言えなかったのか日本語でメモを取る。辞書で調べる。その英単語を覚える。それからもう一度、やり直し。

 それを何度も繰り返し、1日かけてひとつのテーマについて5分間英語で話せるようにした。それを36テーマ。

 結局2か月ぐらいかかったが、5分間×36テーマ=180分間、3時間を英語で自分自身について話せる表現が身についた。

 日本語なまりの発音で、かなりゆっくりしか話せなかったが、長年の呪縛からの解放となるきわめて大きな進歩だった。それまで絶対に開かないと思っていた冷たく重いドアが蹴破られ、未来への一筋の光がさした気がした。

 国境なき医師団にも、晴れて入団。

 これでよしておけばいいものの、新たな夢に目覚めた僕は、30代の半ば、ハーバード・ケネディスクールに行きたい気持ちが強くなっていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン