日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。今回は、ベトナムからの技能実習生として来日し、現在は大学院で学びながら母国の農業に寄与したいと志すゴー・ティ・トゥー・タオさんにうかがった。【全4回の第2回】
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農作業は当然ながら早朝の仕事もある。どんなふうにタオさんは勉強していたのだろう。
「実習生のときは、夜は7時、8時に寝て、朝3時頃に起きるという生活だったんですが、私、本を読むことが好きで、読書で勉強しました。日本に来たばかりの頃は、毎週日曜日に美幌図書館へ行って、漢字が少ない、ひらがなの多い本を借りて読みました。ダイソーで小学生用の本を買ったりもしましたね。最初は絵本も読みました。
ベトナムでも本は読んでいたんですけど、重いから持って来なかったんです。日本にもベトナム語の本、あるだろうと思っていたらなかったので、日本語の本を読むしかなかった。それが勉強に結び付きました。
問題集や教科書ばかりやるのは退屈というか、なんか意味がないなって思っていて。本を読むと内容が頭に入って来るから、そこに出てくる言葉も同時に覚えられる。やっぱり読んでいて楽しいほうが覚えられます。言葉だけ勉強しててもあまり集中できないし、すぐ忘れちゃう。でも、本を読むときは内容に入り込んでいるから忘れないんですね」
うんうんと頷いてしまう。どうしても勉強は「覚えるために覚える」ものになりがちだ(というか、それが勉強というものかもしれないが……)。教える側としては、学習者が興味のありそうな話題を授業中に盛り込むなどして、その日の課題が記憶に残るように工夫するけれど、能動的に取り組める素材を自ら選んで学ぶことほど「強く」覚えられる方法はない。ストーリーを追いながら言葉を頭の中に「入れて」いくと、言葉はきっと「入って」いく。