2020年8月、国立北見工業大の修士課程に合格

2020年8月、国立北見工業大の修士課程に合格

「工場の昼休みの時間は、昼寝していてもいいんですけど、いつも本を読んでいました。そうすると『なに読んでるの?』って、周りの人が話しかけてくれる。そのうちに『あ、この言葉は日常会話にも使えるんだな』みたいに、少しずつ分かってくる。話せるようになってきたかな? って思ったのは来日して半年くらい過ぎた頃ですね。短い文しか話せなかったのが、だんだん長い文が作れるようになっていきました。

 今も本は読みます。心理学とか、ビジネス関係のものとか。私、稲盛和夫さんの本がすごく好きなんですよ。『生き方』という本を、漢字を調べながら1年かけて読みました。前の日に読んだ部分を忘れてしまって、もう一回戻って読み返したりするので、1冊読み終えるのに時間はかかりますが、読書は大好きです。

 本を読んだり、勉強したりするときはコーヒーをよく飲みます。お父さんがベトナムでコーヒーを作っているんですけど、初めて日本へ来たときは、荷物の中にお父さんがコーヒーをたくさん入れてくれました。お父さんのコーヒーを飲むと、やっぱりほっとしましたね。周りの人とも一緒に飲みました」

 そうだ、ベトナムはコーヒーの栽培に適した温暖な国だが、対照的な気候の北海道での生活は驚きも多かったのではないだろうか。そのあたりも聞いてみよう。

「もちろん、寒いところだと知ってはいたんですけど、どのくらいの寒さなのか想像がつきませんでした。ベトナムは一年中、暑いというか暖かいから、寒いっていうのがそもそも分からない。だから最初の冬は大変でしたね。仕事が終わると私達4人、全員でストーブの周りに集まってもうどこへも行けない、動けない(笑)。肌も乾燥して、手にはひび割れができたりしました。寒さもそうですけど、乾燥もつらかったです。

 雪を初めて見たときはわくわくしました。朝の天気予報で『今晩は雪が降ります』って言っているのを聞いて、その日は1日中、ずーっと空を見ていました。降ってるのかな、降るのかな、と思いながら雪を待ってました。

 今は北見に住んでるんですけど、北見の雪は湿ってなくてとてもきれいです。でもそれは空気が乾いているから。だから今も肌の乾燥には悩まされますね」

第3回に続く

【プロフィール】

ゴー・ティ・トゥー・タオ/1992年、ベトナム生まれ。2017年6月、美幌農業協同組合の技能実習一期生として来日。現在は北見工業大学大学院博士課程に在籍し、研究テーマは「農薬の無害化」。

◆取材・文 北村浩子(きたむら・ひろこ)/日本語教師、ライター。FMヨコハマにて20年以上ニュースを担当し、本紹介番組「books A to Z」では2千冊近くの作品を取り上げた。雑誌に書評や著者インタビューを多数寄稿。

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン