『80歳の壁』など数々のベストセラーを生み出す和田秀樹医師が、「58歳から元気になる方法」をテーマに、現役世代の悩みに答える。長年連れ添った夫婦が、子育て中や現役時代には「見て見ぬふり」で済ませてきた“夫婦の相性”の問題に直面するのが、定年前後に2人きりの生活が始まるタイミングだろう。夫婦の危機が訪れる前にできること、その対処法などを和田医師が語る。
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「1人」の楽しみを知る
コロナ禍の「外出自粛」で日本中の家庭が経験したと思いますが、狭い我が家で一緒に過ごす時間が増えると、どうしても相手の嫌だと感じる部分(話し方や態度を含めて)が目につくようになります。それは仕方のないことだとも言えます。
現在58歳の人であれば、現在の平均寿命から言って残り30年近く夫婦関係を続けなければなりません。私は、その期間は我慢するには長すぎる、と思います。そうした逃げ場のない関係を変えるには、一緒に住むとしても「ほどよい距離感」をつくるのがまず大事なことです。
その実践の一つとして、「日常の食事・家事は全て別々にする」というルールを決めてみるのはどうでしょうか。ただし、まったく食事をともにしないと本当に「家庭内別居」になってしまうので、「月に数度は一緒に食事をする」というルールも合わせて設定するのがお勧めです。
昔と違い、今は家事代行サービスで食事を作ってもらうこともできますし、コンビニエンスストアの弁当や惣菜の種類も豊富。味もかなり美味しく進化しています。スーパーには、1〜2人前の惣菜や刺身のパックなどが売られており、物価は上昇中であるとはいえ、1日1000円程度の食費でも、ある程度の満足は得られるでしょう。
都市部の駅前に出れば安く食事できる店がそこらじゅうにあり、1人での外食に不便はありません。男性のなかにはスーパーで1人で買い物したり、飲食店で1人で食事するのが寂しく感じたり人目が気になる人がいるかもしれませんが、慣れてしまえばどうってことはありません。