本当は国技館でやれるはずだった!?
国技館の土俵で断髪式を開催するには、関取として30場所以上の実績が必要となる。関取在位53場所の逸ノ城にも権利はあったが、行使には至らなかった。二所ノ関一門の関係者が言う。
「引退後、逸ノ城から国技館で断髪式を行ないたいと連絡があり、師匠が協会や一門に根回しして2月3日という日取りまで決まっていた。ところがその後、逸ノ城の弁護士から断わりの連絡があったという。師匠は事情がわからず困惑していたが、今も弁護士を通じなければ逸ノ城とは話ができない状況で、背後でけしかけている人物がいるようだ。
断髪式は部屋の関係者は誰も出席しないため、手順など細かいことがわからないようで、師匠と仲たがいして退職した床山に助けを求めたようです。当然、師匠が止め鋏をやることはない」
実業団横綱の資格で外国出身力士として初の幕下15枚目格付け出しデビューとなった逸ノ城は、幕下と十両を4場所で通過。新入幕場所ではザンバラ頭で1横綱2大関を破って終盤まで優勝争いに絡み、昭和以降初の新入幕から2場所目での関脇昇進となった。“モンゴルの怪物”と呼ばれて一躍大関候補となったが、腰痛と膝のケガで低迷。2022年5月場所で初優勝すると再び脚光を浴びたが、それから1年もしないうちに突然の引退となった。
1万人が収容できる国技館で引退相撲・断髪式を行なえばチケット収入と祝儀で数千万円単位の収入になると言われている。ホテルで開催する力士もいるが、やはり収入は大きく及ばない。コロナ禍で断髪式が開催できない状況が続いていたが、引退発表から断髪式まで1048日の安美錦(現・安治川親方)や920日の蒼国来(現・荒汐親方)のように髷をつけたまま親方を続ける例が多かったことからも、いかに断髪式が祝儀集めの場として重要かがよくわかる。
これだけの実績と人気がある力士がなぜ国技館での断髪式を放棄するような辞め方になったのか。今後、逸ノ城が口を開くことがあるのだろうか。