「要再検査」「要精密検査」「経過観察」「異常なし」……健康診断の結果表を見て、自分の健康状態をわかったつもりでいる人は多いはず。しかし実際には、そこから導き出される“数値”に現れない“ウソ”が存在するかもしれない。医療に詳しいジャーナリストの村上和巳さんは「基準値を超えると病気の懸念がある」という考えは間違いだと指摘する。
「“基準値は上回っているものの、臨床的には正常”という状態が存在します。特にメタボの特定健診で行われる『血圧』『コレステロール値』などは、基準値を少し超えたからといってただちに異常とはいえない。しかし医師によっては安易に投薬治療に誘導するケースも散見されます。
特に血圧は検査時に病院で測ると緊張して平常時よりも上がることもある。また、冬は夏よりも血圧が高くなりやすい。一度や二度の測定で判断するのは早計だといえます」(村上さん)
東海大学名誉教授で大櫛医学情報研究所所長の大櫛陽一さんも、血圧やコレステロールの基準値に対して懐疑的なひとりだ。
「1983年は収縮期180mmHg以上が『降圧剤』が必要とされていましたが、その値は徐々に引き下げられています。現在は収縮時130mmHgなら『やや高い』と判断され、140mmHgを超えると『高血圧』と診断される。そのため、現在は高血圧の患者が激増しており、日本の成人の約4割が高血圧と診断されます」(大櫛さん・以下同)
年をとれば血管の弾力性が失われるので、血液を全身に送るために血圧が上がるのは自然なこと。にもかかわらず、正常値から外れるとすぐに降圧剤が処方されるのが問題だと大櫛さんは指摘する。
「患者が増えれば薬をのむ人も増える。つまり、厳しい基準値を設けることによって患者が病気にさせられ、副作用が多い薬をのむことになり、製薬業界が儲かる仕組みが作られているのです。コレステロールも同様で、体に悪いと毛嫌いされていた時期がありますが、欧米では20年ほど前に否定され、現在では体に必須の脂質だとすらいわれています。
実際、コレステロールが不足すれば生理が止まったり、免疫力の低下から感染症やがんのリスクが高まり、うつ病や記憶障害の原因にもなります。特に女性はLDLコレステロール値が高い方が、死亡率が低くなることもわかっています。女性は脂肪をためて利用する能力が高いため、高コレステロールで病気になることは少ないのです」