しかし、日本の健診ではLDLコレステロール値が140mg/dLを超えると病院の受診を推奨される。そこに大きな危険が潜んでいると大櫛さんは続ける。
「私の知人の男性にも定期健診の結果、コレステロール値が基準値より高かったことで薬を処方された人がいました。しかしその薬には筋肉が溶ける『横紋筋融解症』の副作用があり、強い筋肉痛のような痛みに襲われたそうです。
あまりにもつらかったため痛み止めをのんだものの、まったく効かない。かかりつけの医師に相談すると痛みを抑えるために、麻薬性鎮痛薬が処方された。その結果、今度はその薬の副作用で寝たきりになってしまったと聞きます。
基準値に振り回され、“とりあえず”で薬を処方された結果、取り返しのつかない事態になることもある。投薬には慎重になるべきですし、多くの場合、コレステロール値は高いままでも問題ありません。米国では189mg/dLまで正常で、これを超えると遺伝性の家族性高コレステロール血症の精密検査をします。その場合、HDLコレステロール値は40mg/dL前後と低いのが特徴です」
血圧やコレステロールの「基準値」が弊害を生む一方、しっかり数値を確認することが必要な項目もある。糖尿病の診断基準に用いられる「HbA1c値」だ。
「特に女性の場合、糖尿病の発症年齢の平均が60才なので、ある程度の年齢になればHbA1c値は注視しておいた方がいい。基準値では6.5%以上で糖尿病の疑いがあります。糖尿病は根治が困難で全身に合併症が起こる病気です。注意して値を見守り、少しずつ上がってくるようなら、早めに対処すべきです。6%前後なら、糖質(デンプン類と糖類)を控えるだけで日常生活を維持できます」
※女性セブン2024年1月4・11日号