趣里が主演を務めるNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。現在、戦時下を舞台に描かれているが、そのまま年内の放送が終了。朝ドラとしては異例ともいえる戦時中のまま“年またぎ”をすることに。その狙いについて、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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28日、朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)の年内放送が終了。空襲で焼け野原となった東京の街並みを見たスズ子(趣里)はショックを受けながらも愛助(水上恒司)の無事を確認し、地方巡業へ……時は昭和20年8月。物語は終戦間際まで進みながらも、けっきょく戦時中のまま年を越すことになりました。
年明けは1月4日の木曜日に再開し、翌5日金曜日に放送されたあと、土日をはさんで通常の週5日に戻ります。驚かされるのは、ただでさえ「朝に見るドラマで戦争のシーンが長引くのは重い」と言われる中、あえて年をまたぐという異例の構成。
戦時中の重い気持ちを視聴者に引きずらせたまま、6日間のブランクが空く年またぎを選んだのはなぜなのか。放送開始時間が8時になった2010年以降の戦争と年またぎの事例をあげながら、見どころなどを掘り下げていきます。
朝ドラの終戦は序盤か終盤に二分
まず2010年以降に放送された朝ドラの“戦争と年またぎ”の関係性をあげていきましょう。
年をまたがず年内で終戦した作品は、2016年『べっぴんさん』が10月15日放送の第12回で終戦、2018年『まんぷく』が10月29日放送の第25回で終戦、2021年『カムカムエヴリバディ』が11月24日放送の第18回で終戦、2011年『カーネーション』が12月28日放送の第75回で終戦。
一方、年明け後に戦争がはじまった作品では、2013年『ごちそうさん』が3月8日放送の第132回で終戦、2014年『マッサン』が3月11日放送の第135回で終戦、2017年『わろてんか』が3月28日放送の第148回で終戦、2020年『おちょやん』が4月7日放送の第88回で終戦(コロナ禍で放送期間が11月30日~5月14日)。
また、2015年『あさが来た』は終戦前に終了し、2019年『スカーレット』は戦後の昭和22年からスタート。2010年『てっぱん』、2012年『純と愛』、2022年『舞いあがれ!』の3作は現代劇でした。
近年の朝ドラでは、戦時中のシーンを新年に持ち越した作品はゼロ。その多くは序盤の10~11月か、終盤の3月に終戦が描かれています。つまり終戦は「物語が大きく展開するきっかけ」と「最後の試練」に二分されているということでしょう。序盤に終戦を描く作品は「ゼロからはじめて成功を勝ち取る」、終盤に終戦を描く作品は「築いてきたものを失ってもなお立ち上がる」という主人公の姿を描いた物語になります。
例外は中盤に終戦が描かれた『カーネーション』。年末の放送を終戦で締めくくったことで、新年から新たな主人公の物語を見せる前編・後編の2部作というムードがただよっていました。
『ブギウギ』はこれらのどのパターンにも該当せず、戦時中のシーンで年またぎして、新年の早いタイミングで終戦のシーンが描かれるようです。