おかずには「ちくわの炒め物だね。ちくわを何本か乱切りにして、胡麻油で軽く炒め、醤油と七味を好みでかける。炒めたら、そこに追い胡麻油をかけて終わり。これは数分で簡単にできる」。切って炒めるだけ、ほんの5分で出来上がる品はシンプルゆえに生姜ご飯の邪魔をしないそうだ。
正月用の一品にもなる簡単チャーシュー
正月用の一品にもなるというのはフライパンで作るチャーシューだ。材料は豚バラブロック300g、生姜は80gを千切りに。ニンニクは3~5カケをお好みで量を調節し、潰す感じで。調味料は醤油50cc、みりん50cc、お酒50ccとどれも同じ分量、水は100cc。「肉が増えても、調味料は1対1対1。若い衆が覚えやすいよう、当番レシピはどれも調味料の量が簡単だ。これなら覚えるのも楽だろう。当番に入る者が全員、俺のように料理が好きとは限らない。人数が増えて作る量が多くなっても味は変わらない。誰もまずい物は食べたくないからね」と元組長。
用意するのは小さめのフライパン。「煮汁が肉にしたたる方がいいので、フライパンは小さめで」という。豚バラをフォークで両面適当に刺し、フライパンを中火にかけて油は引かずに片面2~3分ずつ焼く。「肉から出た油はキッチンペーパーで拭き取っておく。余計な油は最初に取り除くことで、煮汁が脂っぽくならない」(元組長)。
ここに調味料を入れ、ニンニクと生姜を投入、中弱火で片面5分ずつ両面を焼く。「火加減は強すぎないように。キッチンペーパーで落とし蓋をすれば、灰汁も取れて便利だ。最後に数秒、強火で煮立てて終了。そのまま覚ましてもよいが、ビニールなどに入れて空気を抜いてから覚ます方がいい。時間をおくと味が入ってよりおいしい」(元組長)。どんぶり飯の上にこのチャーシューをのっければ、組員たちに好評の絶品チャーシュー丼が出来上がる。調理時間は20分程度という簡単チャーシューだが、「時間をかけて煮込んだぐらいうまいと評判は上々。肩ロース肉でも作ってみたが、バラ肉の方が柔らかくてうまいね」(元組長)。
おせちは作らずとも、お雑煮は取り寄せとはいかない。元組長も「雑煮は作った。関東は白だしを使った醤油ベースのすまし汁に角餅、関西は白みそ仕立てで丸餅を入れる。丸餅なのは角を立てず円満にという意味があるから。縁起を担ぐのは一般人と同じだね。いや、それ以上かな。関西風も関東風もどちらも中身の具はシンプル。餅は年末の餅つきでついた物を入れていた」。
「自分が組を持ってからは、組の雑煮は関東風だった」と元組長がいうのは、出身が関東で、組は関東を拠点に活動していたからだ。上部団体は関西にあり「親分の所は関西風の雑煮。組織によってこれだと決まった雑煮があるわけでなく、組事務所のある地域の伝統や組長の好み、出身による」と話す。
だが実際には、「大晦日には初詣客を見込んで屋台を出していたからね。テキヤをやっていたヤクザにとって正月はかき入れ時。手伝いや見回りで大忙しさ」。現役時代は雑煮をゆっくり食べる暇もなかったというのが元組長の正月だ。