SNS等で知り合った相手に恋愛感情を抱かせて金銭を騙し取る「国際ロマンス詐欺」の被害が後を絶たない。そうした中で、弁護士が第三者に名義を貸して「ロマンス詐欺の被害金を回収できる」と謳い、着手金を受け取っていた事例も報告されている。被害者感情に付け込んだ“二次被害”の実態と、被害金を回収できる可能性について、『ルポ 国際ロマンス詐欺』の著書があるノンフィクションライター・水谷竹秀氏が取材した。
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国際ロマンス詐欺の被害金を回収できると謳い、広告会社に弁護士名義を貸して法律事務をさせた疑いで、大阪弁護士会に所属する川口正輝弁護士(38)が12月20日、懲戒請求を受けたと発表された。昨年8月以降、約1800人の被害者から9億円超の着手金を受け取ったとされ、大阪弁護士会に相談が相次いでいた。
同様の手口で着手金を受け取ったとして、12月上旬には東京弁護士会所属の竹原孝雄容疑者ら4人が逮捕されている。このほか千葉県弁護士会所属の大友道明弁護士も8月下旬、誇大な広告をしたとして同会から「懲戒処分相当」と判断された。こうした被害者の弱みに弁護士が付け込む二次被害が多発しているのだ。
国際ロマンス詐欺の被害は増加の一途を辿っているが、被害の事情に詳しい金田万作弁護士(東京投資被害弁護士研究会所属)によると、ほとんどの被害者は弁護士や警察署に駆け込んでも被害金を回収できず、泣き寝入りするしかないのが現状だ。にもかかわらずホームページ上で「あなたに代わって回収します」、「すべてお任せいただければ丸っと解決します」などと誇大広告を表示し、被害者に期待を抱かせて着手金を受け取る悪徳弁護士がまだ10人程度はいるという。上記の3件は「氷山の一角」なのだ。金田弁護士はこう警鐘を鳴らす。
「被害金の回収ができると言っている弁護士はまず怪しいと思った方がいい。もし弁護士に相談をする場合は、LINEなどの通信アプリではなく、直接会ってよく話をしてほしい」
では、なぜ被害金の回収は難しいのか。
ロマンス詐欺にあった被害者が現金を犯人に送る方法は、銀行口座への振込と暗号資産による送付の2パターンが存在する。金田弁護士によれば、わずかながら回収できる可能性があるのは前者の銀行振込の場合だが、それでも高いハードルがあるという。
「銀行口座への振込の場合は、口座を凍結することで回収できる可能性もありますが、犯人は被害者から振り込まれたお金をすぐに引き出しているケースがほとんど。被害者は、犯人から複数の銀行口座に振り込むよう指示されるため、口座は多岐にわたります。たとえば被害者が10の口座に振り込んでいたら、お金が残っているのは1口座程度のイメージです」
しかも、他の被害者も同じ口座に振り込んでいる可能性があるため、凍結した口座に現金が残っていても、他の被害者らと分配しなければならない。金田弁護士が続ける。
「回収できる額も、被害額が数百万円の人であれば、最大で半額ぐらいまで。数千万円の人なら1割程度でしょうか。私が担当した中でも、全額回収したケースはありません」