日米同盟瓦解の悪夢
手嶋:アジアの要衝、日本の舵取りも問われます。
佐藤:2023年9月の国連演説で岸田首相は従来の価値観外交から脱却し、中東やグローバルサウスとの関係において民主主義や人権を前面に押し出さず、実利を追求する姿勢に転換しました。エネルギーを国益として追求する岸田さんの姿勢は評価すべきです。
他方、裏金問題で自公連立が崩壊して総選挙に雪崩れ込むと、日本維新の会や日本保守党が躍進して究極のポピュリスト政権が誕生し、日米同盟が瓦解する恐れがあります。
手嶋:なんという悪夢。日本には意欲に富んだ人材がまだまだ眠っているはずです。若い芽を育てることが不可欠です。
佐藤:日本の合計特殊出生率は1.26で、実は韓国の0.78、中国の1.16を上回る東アジアの優等生。半世紀後の人口減少は日中韓で大きな差が出るので、それまでの間、周辺での武力行使を防いで国力を豊かにする努力が求められます。機が熟すまで力を蓄えれば、日本は再び東アジアをリードできるはずです。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
手嶋龍一(てしま・りゅういち)/1949年、北海道生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局長などを歴任。2005年に退職後、作家・ジャーナリストとして活動。『ウルトラ・ダラー』など著書多数。
佐藤優(さとう・まさる)/1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在露日本国大使館などを経て外務省国際情報局に勤務。現在は作家として活動。主著に『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』などがある。
※週刊ポスト2024年1月12・19日号