「働き方改革実行計画」(2017年決定)によれば、「副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効である」とある。その言葉を実現すべく、政府は企業勤めの正社員に対しても、もうひとつ仕事をしましょうとすすめ、企業側にも受け入れ環境を整備するよう呼びかけている。その影響もあって副業ブームと呼んでもよいくらい世間の関心は高いが、実際にチャレンジしている市井の人々の多くは、まったく利益が出ないとこぼすことが多い。ライターの宮添優氏が、副業推奨と一般市民の現実についてレポートする。
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最近、あちこちで「副業」の二文字を見るようになった。政府が働き方改革の一環として推奨しているとはいえ、そもそも企業にとっては好ましくないはずだ。理由はいくらでもあって、本業への影響が出るのではないかとか、はたまた社員がライバル社の仕事をしているんじゃないか、副業の方が割が良く、そのまま転職されてしまうなどの懸念もあったはずだ。大手紙経済部記者も、次のように断言する。
「企業が社員の”副業OK”を続々打ち出し、副業斡旋の専門サイトも林立するほど、空前の”副業ブーム”であることは間違いない。実際に有名企業社員が、週5日勤務を4日に減らし、空いた1日で別の仕事をやっている、という例は確かにある」(大手紙経済部記者)
大手紙記者が取材した複数の大手企業の担当者によれば、副業の解禁・推進を行う企業側、そして行政側の狙いとしては、人材不足が叫ばれる中で、労働力をうまく分散させて効率よく利益を生み出したい、という思惑があるという。一方で、実情は次のようなことではないかとも声をひそめる。
「企業側が社員ひとりひとりに支払う給与を圧縮させる、という裏の目的もあったはずです。本来なら副業せずとも生活ができるのならそれに越したことはないですから。ただ、喧伝されているほど、副業をしている人は多くない印象です」(大手紙経済部記者)
確かに、筆者の周囲で「副業」をしている人は、本業である専門分野の範疇内で行っている方ばかりだ。そのうえで、より多く稼ぎたいとか、複数の働き口を確保しておきたいといった理由を口にする。だが、中には「副業ブーム」の雰囲気に飲まれ、流された結果に「なんとなく副業」してしまい、悲惨な目に遭っている人も少なくないようだ。
楽しそうに取り組み、それでお金も稼げるのならと応援していた
「1500円の商品が売れたと喜ぶ妻でしたが、あれだけ手間暇、そしてカネまでかけておいて、それは本当に副業なのかと……」