2017年に決定した「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業を政府も推進。「働き方改革実現推進室」の看板をかける安倍晋三首相(右)と加藤勝信働き方改革相(肩書きはいずれも当時)(時事通信フォト)

2017年に決定した「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業を政府も推進。「働き方改革実現推進室」の看板をかける安倍晋三首相(右)と加藤勝信働き方改革相(肩書きはいずれも当時)(時事通信フォト)

 ほとんどの読者なら察しがつくだろうが、結局この副業で松尾さんが報酬を得られることはなかった。松尾さんは、いわゆる「情報商材(教材)」を売りつけられるだけの、典型的な副業詐欺に取り込まれてしまったのである。

「教材をしっかり見れば、誰でも短時間で多くの記事を書けると説明されましたが一向にウェブサイトに掲載するものが書けず、当然収益も出ない。担当者に相談しても”他の人は稼げている”とか”あなたの方法がおかしい”と言われるばかり。その後、副業詐欺に注意、といった法律事務所のネット広告を見つけ、私は騙されたのかと唖然としました」(松尾さん)

増える副業紹介サイト

 経済界や政府も推し進める「副業」だが、本業の合間にやる副業は、誰でも簡単にできるもの、とするイメージがなぜか拡がっている。そういった印象は、前出の松尾さんが見たような副業ビジネスへ誘うサイトの林立も原因の一つだろう。だが、副業であっても本業であっても、それで収益が得られなければ仕事として成立しているとはいえない。何より、誰でも彼でも簡単にできる、などという仕事は世の中に存在しない。その確認を怠った松尾さんにも失敗の責任がないとは言えない。

「副業って、なんとなく簡単で隙間時間でできて……というイメージがありましたし、手に職をつければパートを辞めて、自宅でゆっくり仕事ができるなんて想像していました。お恥ずかしい限りです」(松尾さん)

 松尾さんのように、副業へのフワッとしたイメージを持っていたが為に騙されたという人は、怪しげな副業紹介サイトが雨後の筍ごとく登場する現実を見る限り、増えているはずである。筆者が取材した中には「中高生でも稼げる副業」といった広告を出している業者もあった。関係者に取材を進めると、アダルト系のチャット嬢のバイトを斡旋されたり、キャバクラやガールズバーなどに派遣されてしまうパターンもあった。もし本当に中学生にそのような内容の仕事を斡旋しているのだとしたら違法である。それでも、その種のサイトが林立しているのは、やはり「誰でも簡単に」とか「短時間で」といった文言が踊るサイトを経由して登録してしまう若者がいるからだろう。副業の意味を勘違いしているのが、中高年だけではないことも想像がつく。

 冒頭の経済部記者による見立てのように、本来、本業一本で十分な給与をもらえていれば、副業などする必要もない。ここで紹介した、騙されたような形に陥ってしまっている人たちのほとんどは、非正規労働者や主婦などであるため十分な給与を得ておらず、だからこそ「ブームの副業で」と思い込んでしまったのだ。

 政府はもう何年も企業に「賃上げ」を要求し続けているが、ごく一部の業種や大手企業を除けば、正社員を増やす、給与が上がるという気配は感じにくい。こうした被害者を生み出している遠因とも思えてならないが、どうだろうか。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン