観光立国推進基本法が施行されて16年、日本の訪日外国人客数は16年前の2564万人から2019年には5196万人を記録していた。その後、新型コロナウイルスの世界的流行により落ち込むが、2023年後半から2019年水準に戻りつつある。ところが、訪日外国人客の消費傾向がコロナを挟んで大きく変化しつつあるというのだ。ライターの宮添優氏が、爆買いを止めた彼らが楽しみにしていることと、なぜその選択をしたのかについて本音を聞いた。
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世界を震撼させた新型コロナウイルスの猛威が去り、海外から来日するインバウンド客数も回復してきた。2023年12月に発表されたその前月、11月の訪日外国人客は244万800人となった。2019年同月とほぼ同数で、10月に続いてコロナ前の水準となった。確かに、東京や大阪といった日本の大都市を歩けば、大きなスーツケースを転がす外国人観光客の姿をあちこちで見かけるようにもなった。
しかし、東京・銀座にある老舗デパート内の有名ブランド店従業員・相根愛さん(仮名・40代)は「未だ爆買いは戻ってこない」と嘆息する。
「目抜き通りを歩けば外国人観光客の姿は見かけるものの、財布の紐は非常に硬く、百貨店に入ってくる客は少ないです。特に爆買いの象徴であった裕福な中国人客は、今も戻ってきていません」(相根さん)
リーズナブルに日本文化を楽しみたい中間層
確かに、コロナ前の水準に戻ったとされる11月の訪日外国人客数をみると、中国だけに限れば対2019年比で65.6%減と回復からはほど遠い。2月10日から旧正月、春節の大型休暇があり多くの中国人が旅行へ出かける時期だが、訪日については以前の水準に戻らないのではないかと見られている。
なにより現在、中国国内では長らく続いた不動産バブルが弾け、かつての富裕層たちは貯蓄に走り、消費をしなくなったと報じられている。そのため中国からの観光旅行は制限がなくなったにも関わらず、以前のような勢いはなく、それでも訪日している中国人観光客は派手に「爆買い」をしなくなった。反面、円安を背景とした割安感を求め、リーズナブルに日本文化を楽しみたいという中国を含めた外国の中間層が、日本へやってきている模様である。
中国人に限らず、インバウンド客たちの質が大きく変化しているという指摘は多い。そして彼らが目指すのは、日本国内の牛丼店や回転寿司店、ラーメン店、そして街中のコンビニなのだ。