大相撲初場所(東京・国技館)9日目から北勝富士(西前頭3)と朝乃山(西前頭7)が休場となった。今場所の休場力士は貴景勝(西張大関)、高安(東小結)、北青鵬(東前頭8)、碧山(西前頭17)と合わせて幕内で6人となっている。相撲担当記者が言う。
「力士の大型化に加え、ガチンコ相撲が主流となり土俵下までもつれながら転落していく相撲が増えたことが大きいでしょう。年6場所では傷を治す時間もなく、故障を抱えながら本場所に出場するケースも目立ってくる」
4日目から休場した貴景勝がまさにそれに当たるだろう。慢性的な首痛の悪化により休場となった。これにより3月の春場所は栃東(現・玉ノ井親方)と並ぶ8度目のカド番(史上4位タイ)となる。2021年名古屋場所の逸ノ城戦で頚椎を痛めたのが原因だという。前出・相撲担当記者が続ける。
「春場所で休場、もしくは負け越せば、貴景勝は大関から陥落します。幕内には高安、御嶽海、正代、朝乃山と4人の元大関がいるが、コロナ感染対策違反行為で1年の出場停止処分を受けた朝乃山以外の元大関は、ケガに泣かされての陥落だった」
かつて相撲協会には「公傷制度」があった。本場所の取組でケガをした場合、その場所については休みを負けに換算して番付が下がるが、翌場所は全休しても同じ番付に留まれるという“救済制度”だった。
もちろん公傷認定委員会が審査し、取組を担当した審判委員5人の証明書、医師の診断書の提出が義務づけられるといったルールがあった。1場所の猶予があることで2か月間の加療期間が設けられ、朝潮や栃東など大関が陥落を免れたケースも少なくなかった。
しかし、公傷制度を利用した休場力士が続出。2003年名古屋場所では、公傷7人を含む15人の関取が休場したことをきっかけに、2004年初場所から公傷制度が廃止された。
ケガで番付を落とし、また上がってくるのも修行
相撲協会の資料では、過去5年間の決まり手は「押し出し」と「寄り切り」が49.9%を占めるが、「突き落とし」(5.7%)や「寄り倒し」(4.6%)、「押し倒し」(3.4%)といった土俵下にもつれて落ちていく一番も多くなった。物言いがつけば、ビデオ室がコマ送りでどちらが先に落ちたかで勝敗を決めるようになり、最後まで手をつかない力士も増えた。
8日目に豊昇龍の「押し倒し」で土俵下に転落した北勝富士は、土俵にも上がれず車椅子で診療所に向かい、翌日から休場している。ガチンコ相撲による激しい一番が増えたなかで、「公傷制度」の復活はあり得ないのだろうか。