裁判長も続いて質問した。
裁判長「考えないというが、その理由はある?」
被告「理由というと?」
裁判長「理由と聞かれても答えられないですか?」
被告「生きているのがもう嫌……」
裁判長「だから?」
被告「(うなずく)」
最後に「もう何も思い出したくない……」と言って、被告は泣きながら鼻をかみ、被告人質問は終わった。被害者へのことを「考えない」と淡々と述べた被告に対して1月18日、死刑判決を言い渡した裁判長は、最後に控訴の説明をする際に言った。
「弁護人とよくよく相談してください。考えることを諦めないでください」
被告はうなずき、目をこすった。犯行後、その気持ちはないのに謝罪の手紙を書いて出頭し、逮捕後は「罪を軽くするため」に嘘をついていた。そんな被告が法廷で語った内容が、どこまで本当なのかという疑念は最後まで残る。
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)