テレビを通じてフェイクドキュメンタリーを知らしめた伝説のドラマ3部作「山田孝之シリーズ」(テレビ東京)。『山田孝之の東京都北区赤羽』に続く2作目は山田孝之がカンヌ国際映画祭への出品までの挑戦した『山田孝之のカンヌ映画祭』だ。
長澤まさみ、芦田愛菜、映画監督の河瀨直美など、当時のフェイクドキュメンタリーの状況を踏まえると豪華なタレントが揃い踏みだ。第1回に引き続き、映画監督の山下敦弘氏と放送作家の竹村武司氏に制作裏を訊く。
聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。現在、ネットで話題のフェイクドキュメンタリーに意欲的に取り組んでいるテレビ番組の制作者にインタビューを行なう短期シリーズの第5弾【全3回の第2回。文中一部敬称略】。
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『山田孝之のカンヌ映画祭』はドキュメンタリー成分が強かった
2015年、『山田孝之の東京都北区赤羽』が強烈なインパクトを残し、世間に話題を呼んだ。そして2年後、主演・山田孝之、構成・竹村武司、監督・山下敦弘&松江哲明という同じチームで『山田孝之のカンヌ映画祭』が制作される。
賞に無縁だったという山田孝之が山下敦弘とともにカンヌ国際映画祭のグランプリを獲ることを目指し、映画を制作するまでを追った、いわゆるフェイクドキュメンタリーである。引き続き、竹村武司と山下敦弘にその制作秘話を伺った(取材はそれぞれ個別でおこないました)。
元々は『山田孝之の東京都北区赤羽』同様、とあるノンフィクションマンガを実写化しようと考え企画がスタートした。
「メンバー全員が影響を受けてきたノンフィクションマンガがあったのでそれを映画に置き換えて作ろうというのがスタートでしたね。それで山田くんが賞を獲ったことがないという話になって何かの賞を狙うのがいいんじゃないかと。アカデミー賞とかになるとエンタメすぎるというかギャグになっちゃいそうだから、カンヌがちょうどいいんじゃないかと」(竹村)
「最初は俺も、あ、面白そうだねってやっていたんですけど、結果、俺が一番しんどかったですね(笑)。別に自分はカンヌなんか意識してねえよと思っていたけど、やっぱり映画監督としてカンヌをネタにするとだんだん心が痛くなってくるんですよ。それこそ出演してくれた河瀨直美さんに『山下くん何やってんの?』って怒られたりしてちょっと凹んでましたね。自分に直結する題材だったからしんどかった。
でも実際にフランスに行ってカンヌの関係者に話を聞いた時は山田くんも俺もほとんど演じていない。単なる映画小僧みたいで、すごく勉強になりました。あそこは完全にドキュメンタリーと言っていいんじゃないですかね」(山下)