活発化した地震活動に肝を冷やす日が続いている。そんななか政府は最新の地震の「発生確率」に関するデータを公開した──。
「真下から突き上げるような衝撃にびっくりしました。能登半島地震のことがすぐに頭をよぎって、パニックになりました」(60代女性)
1月28日午前8時59分。東京湾を震源とするM4.8の地震が発生し、東京都や神奈川県で震度4の揺れを観測した。元日の日本を襲った最大震度7の能登半島地震からおよそ1か月。同地ではいまだに余震が続いているが、500km以上離れた東京湾で今回発生した地震は無関係ではないという。立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学氏が解説する。
「能登半島地震と先日の東京湾の地震は、同じプレートの東西で起きていて、いわば“きょうだい”のような関係です。近年は日本列島で地震活動が活発化し、地震の発生間隔が短くなっています。強い揺れには常に警戒しなければいけない時期に入っているといえます」
政府の地震調査研究推進本部は1月15日、「長期評価による地震発生確率値」の最新版を発表した。日本で起きる地震は「海溝型地震」と「活断層地震(直下地震)」の2つに分類され、それぞれ「M7程度以上の地震が今後10〜30年以内」に発生する確率が記されている。
この調査結果は毎年1月に更新されるが、発生確率が上昇しているエリアが少なくない。そこで、発生確率が高いエリアについて、順に解説していこう。
いまもっとも切迫しているエリアが同じ発生確率で2か所存在している。1つは「青森県東方沖及び岩手県沖北部」だ。発生確率が10年以内は「70%程度」、30年以内になると「90%程度以上」に跳ね上がる。同領域で地震が発生すれば、青森県八戸市を26.1mの津波が襲い、死者数は青森県全体で5万3000人にのぼると試算されている。そしてもう1つは、日本最西端に位置する「与那国島周辺」。確率の高い領域が、東北と沖縄という日本列島の両端近くに存在するのだ。
ほかにも、北海道沖、宮城県沖、茨城県沖と、太平洋側を囲むように発生確率が高いエリアが並んでいる。なかでも、東日本大震災を引き起こした宮城県沖を注視すべきだ。この領域はより細かく予想されており、「宮城県沖の陸寄り」の発生確率を昨年の調査結果と比べると、10年以内が「ほぼ0〜1%」から「ほぼ0〜2%」に引き上げられ、30年以内も「70〜80%」だったのが「70〜90%」に上昇した。
長年の脅威となっている南海トラフも、10年以内が「30%程度」で30年以内は「70〜80%」と高い確率だ。そして、南海トラフ地震に誘発されて発生すると考えられている相模トラフ地震も、10年以内に「30%程度」の確率で迫っている。
「南海トラフ地震と相模トラフ地震が連動すれば、建物の倒壊による死者が5万人、津波による死者は50万人にのぼるでしょう。津波被害は海の近くだけにとどまりません。津波が川を逆流して、海に面していない埼玉県や群馬県にも水害をもたらします。関西では大阪市内が水没する危険性があります」(高橋氏・以下同)
さらに、南海トラフのエリア内にある日向灘(宮崎県)も30年以内の発生確率は「80%程度」と高い確率が予想されている。巨大地震の発生には一定の周期がある。南海トラフの「発生間隔」は88.2年とされ、前回は約78年前。カウントダウンは始まっていると考えるべきだろう。