警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、足立区の死体遺棄事件で逮捕された、ドラマで話題の”院内警察”のような、警察の知識と経験が生きる意外な再就職先について。
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「院内警察というのは本当にあるのか」。1月12日からフジテレビで放映され始めた桐谷健太さん主演の『院内警察』というドラマを見た知人に、そう聞かれた。答えは「実在する」だが、働いているのはその多くが定年退職した警察OBだ。
院内警察は院内交番、院内ポリスなどとも呼ばれ、一部の大学病院や国立病院で立ち上げられた組織だ。患者やその家族、見舞客らなど不特定多数が自由に出入りする医療機関は、置き引きや窃盗などに注意が必要だ。医師や看護師などへの暴力や病院へのクレーム、患者同士のケンカに職員のセクハラや非行問題など、様々な事件や事故、トラブルが発生する。その対応や解決に院内警察で働く警察OBが当たっている。
ドラマでは院内交番と呼ばれ、桐谷さん演じる主人公も元警視庁捜査一課の刑事で、警察を辞しこの勤務を志願したという設定になっている。2004年、日本で初めて院内交番として渉外室を設置した東京慈恵会医科大学病院で、その任に最初に就いたのも元警視庁捜査一課の管理官だった横内昭光氏だ。慈恵では今でも横内氏の部下らが渉外室に勤務しているという。
ところで、警察OBが働いているのは医療機関だけではない。日本全国の様々な企業や組織が警察OBを採用している。不特定多数が出入りするホテルや百貨店、テーマパークやイベント会場を運営する企業、1つ間違えば大事故につながる可能性がある鉄道会社や航空会社にも警察OBがいる。各県警や警視庁では退職管理条例等に基づき、公表されている署長や本部長など一部の警察官の再就職先は多岐に渡るが、医療機関に再就職するOBは限られている。
各県警で比較的OBが多いのは交通関係や自動車関係の組織だ。運転免許や交通規則に関わる業務に携わる地元の自動車学校や交通安全協会などだ。事故処理などの損害保険を扱う損保会社や共済組合などの保険業にもいる。大都市を抱える県警や警視庁では、銀行や消費者金融などの金融業や証券業、客からのクレームに対応しなければならない飲食業や万引きやスリなどの対策が必要な小売業などにも多い。建設業や不動産業、製薬業やエネルギー関連や石油業、ゲーム機器メーカーなどの製造業、各地の市役所などに再就職する者や、パチスロ関連、公営ギャンブル関係に行く者もいる。警備員になる元警察官が多い警備業は定番の再就職先の1つだ。どの企業もトラブルや事故、事件発生に備えて必要な知識と経験を持ち、いざという時に警察と協力し連携できるルートや体制を整えておきたいのだろう。