元刑事たちの意外な再就職先
既知の元刑事たちもその経験と知識を再就職先でフル活用している。
暴力団犯罪捜査が専門の組織犯罪対策4課(現在は暴力団対策課)の元刑事は、多目的スタジアムを所有する某企業に再就職した。年間を通して様々なイベントが開催される会場では、チケットを入手できないままやってくる客に、高い値段でチケットを売りつけるダフ屋行為が横行していた。スポーツや音楽などの”興行”は、かつて暴力団が関与していた時代があり、暴力団関係のダフ屋もいる。「自分は暴力団組織に広く顔を知られていたからね。半年も経たずダフ屋はすっかり姿を消した。暴力団業界は噂が早い。あの会場でチケットを売ると、すぐに捕まると噂になったのだろう」と警察OBはいう。
警備課にいた元刑事の再就職先は大手自動車メーカー。警備課は治安警備や雑踏警備、災害対策を主に行う部署だ。ダイハツ工業が起こした大規模不正のような問題が起きたらクレーム対応は必至、警察OBが必要になる事態もあり得る。だが元刑事に求められたのはそれだけではなかった。自動車メーカーでは新車発表などを含め毎年、数多くのイベントを開催するからだ。「安全にイベントが行えるよう会場やその周辺の状況を細かく把握し、警備計画を立てる。試乗する場合のルートは安全か、近くに暴力団や反社組織はないか、事故や災害が起きた場合の避難はどうするかなどだ」と元刑事は話す。
電力会社に再就職した組織犯罪対策課の警察OBもいる。電力会社にどのようなトラブルがあるのかと思うが、災害時の対策など平時に準備しておくことは多い。「こんな所にも出向く」言って警察OBは次のように話した。
「配線工事に行った先でのトラブルで、田舎町の畑にある1本の電柱がその現場。そこを囲むわずかな土地を所有したという男が、土地に入るなら金を払えと作業員に要求してきた」という。許可なく他人の土地に踏み入れば、不法侵入になる。「こういう時は我々の出番。電力会社は電柱等の設置する際、電柱敷地料を支払う承諾書を交わしている。ごねれば金が出ると思うのは間違い。もし相手が暴力団員だったらむしろ話は早い。警察が出て行けばすぐに解決する」(警察OB)。
彼らはその専門的知識と経験を生かして、再就職した組織で活躍しているのだ。