2023年12月、係員付き自動運転の走行試験を行う南海電気鉄道の乗務員。自動運転とはいっても人の手は欠かせない(時事通信フォト)

2023年12月、係員付き自動運転の走行試験を行う南海電気鉄道の乗務員。自動運転とはいっても人の手は欠かせない(時事通信フォト)

離職者を減らすための新制度

 一方、経験を積みスキルのある中堅・ベテラン社員の離職も鉄道会社は防がなくてはならない。特に、安全に直結する部門は、機械でカバーできず人の目と手で確認する作業も多い。

 そうした技術系社員の処遇に関しても、京王は2023年12月から夜間の設備保守や夜間・休日の緊急動員にも手当てを支給する制度を開始した。

「乗務員とは違い、技術部門で働く社員は鉄道輸送における縁の下の力持ちです。そうした技術系社員に対して日々の業務の重要性にスポットを当てるという思いを込めて手当を新設しました。深夜時間帯の工事や保守業務における責任者に対する手当、休日の緊急動員などに対する手当です。これらは人によって支給額は異なりますが、一定の処遇改善につながると考えています」(同)

 鉄道事業者は沿線で多くの事業を展開している。系列に百貨店やスーパーマーケットを抱え、そのほかにもマンションを建設・管理したり、スポーツクラブを運営したりしている。こうしたグループ会社の事業を福利厚生に取り入れて、会社の魅力をアップさせることは採用力の強化にもつながる。京王のように、抱えている物件を社員に無償提供するだけでもインパクトは大きい。

 2023年の合計特殊出生率は1.26と過去最低を記録した。2024年も少子化が改善される兆しはない。その一方で、団塊の世代が75歳を迎える。労働力の減少は今後も続くことが見込まれるが、労働力が減少しても公共インフラの鉄道は1日も休まずに走り続ける。鉄道が動かなければ、私たちの生活は成り立たない。鉄道運行が滞れば、日本経済も混乱するだろう。

 処遇改善を急がなければならないのは、全国の鉄道事業者に共通した喫緊の課題だ。それだけに、会議でちんたら話し合っている時間的な余裕はない。地域の足を守るため、一刻も早い処遇改善が求められている。

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