日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年の約8700万人をピークにして減少する一方で、2023年には約7400万人になり、今後も減り続ける見込みだ。足りない労働力を補おうと、高齢者の就業や多様な働き方を推奨するなどして労働力人口(15歳以上人口のうち就業者と完全失業者を合わせた人口)は2012年の6565万人から2022年には6902万人へと増加している。それでも人手不足は深刻だ。ライターの小川裕夫氏が、新卒者の確保と、いま働く人たちに長く仕事をしてもらうために京王電鉄が打ち出した独身寮の無償化や帰省費用の負担などの新制度についてレポートする。
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新型コロナウイルスの影響や過疎化によって利用者が減少したローカル線は、採算面が厳しくなり、近年になって廃止議論が喧しかった。そうした赤字ローカル線の多くは、廃止後に代替交通として路線バスへと転換されるのが一般的だった。
しかし、そうした”常道”の雲行きが怪しくなっている。というのも2022年あたりからバスの運転士不足が深刻化しているからだ。バス運転士が不足すれば、当然ながらバスの運行はできない。バスが運行できなくなると、通勤・通学や買い物といった日常生活に支障をきたす人が増えてしまう。
バスに比べると、鉄道は一度に多くの利用者を輸送することができる。費用面からの比較も検討材料になるため一概に言い切ることはできないが、鉄道を残すか、バスを残すかといった二者択一を迫られた場合、多くの自治体は鉄道を残すことを選択する。
とはいえ、鉄道もバス同様に運転士不足の危機が忍び寄っている。決して楽観視できる状況にない。いったい、鉄道の運転士をめぐって、何が起きているのか。
国家試験の受験資格年齢引き下げや外国人運転士導入は人手不足の解決になるか
国土交通省によると、地方鉄道140事業者のうち70事業者で運転士が不足していることが分かった。そうした事態を受け、国土交通省は鉄道局と100社以上の地域鉄道の運営事業者、オブザーバーのJRや大手私鉄と関係団体などで構成する会議を結成、2024年2月2日に「地域鉄道における運転士確保に向けた緊急連絡会議」初会合を開いた。
初会合では、新規に運転士になる障壁を低くし、より多くの中途採用をしやすい制度の変更が議題として検討された。例えば、「2024年度中に省令を改正して運転士免許の取得可能年齢を現行の20歳から18歳へと引き下げること」や、運転士だけでなく車掌なども含めて「外国人労働者の在留資格である特定技能に鉄道分野を追加する」ことなどが案として持ち上がった。