『笑点』のレディース少女
一之輔:いないんだから、紹介しようがないですよね(笑)。だけどああいう雑誌が持っていた“間口の広さ”は寄席の雰囲気と似ている気がします。硬いのもあれば、くだらない与太話もあるし、全部の噺が万人に受けるわけじゃない。そもそも僕は落語でもラジオのフリートークでも、お客さん全員が笑うものって、実はそんなに面白くないんじゃないかと思っていて。
比嘉:それは自分も一緒ですね。誌面を作る時に考えるのは、東京ドームのジャイアンツ戦のこと。一回の観客数が4万人と言われている。その規模感の人達が楽しんで読んでくれるようなテーマやネタを探すようにしてるんです。
一之輔:わかります、僕もよくあえてお客さんがきょとんとするような伝わりづらいネタを挟んで万人に受けないようにしているから……。
比嘉:でもそんな一之輔さんが『笑点』のオファーを受けたっていうのがすごいですよね。テレビには絶対出ないような孤高のミュージシャンが、あえて紅白歌合戦に出るような“逆のかっこよさ”を感じました。
一之輔:いまだに違和感があるって言われますし、『笑点』公式グッズとして出演者全員の顔を模した人形焼があるんですけれど、みんな笑顔なのに僕だけ仏頂面で口をへの字にしてにらみ付けてる。『ティーンズロード』のグラビアページでポーズを決めてる女総長たちと同じ顔してるんです(笑)。
比嘉:アハハ。確かに一之輔さんの眼光の鋭さは彼女たちに負けず劣らずかもしれない。
一之輔:ちょっとイレギュラーな存在として怒られないギリギリのところを嗅ぎ分ける嗅覚は持っていたいですよね。完全にホワイトな人間になったら面白くないから。
比嘉:全く同意見です。雑誌も笑いも「ギリギリ」が一番面白いんじゃないかな。
【プロフィール】
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県野田市出身。2001年に春風亭一朝に入門し、2012年に真打ちに。テレビやラジオにも多数出演。2023年2月からは『笑点』メンバーに。
比嘉健二(ひが・けんじ)/1956年、東京都足立区出身。1982年にミリオン出版に入社。『ティーンズロード』『GON!』などを立ち上げる。現在は編集プロダクション『V1パブリッシング』代表。
※週刊ポスト2024年3月1日号