自民党派閥のパーティー裏金事件をめぐる政治倫理審査会については、出席者をどうするか、完全公開とするかなどの対応で迷走が続いた。岸田文雄首相が出席の意向を示し、ようやく二階派の武田良太・元総務相、安倍派の塩谷立・元文部科学相、松野博一・前官房長官、高木毅・前国会対策委員長、西村康稔・前経済産業相が公開される審査に出席することとなった。
激しい与野党の攻防のよそに、表舞台で発言する場面がない間も当人たちと顔を合わせているのが各省の幹部官僚たち。まな板の上の政治家たちは今、どんな表情をしているのか。経済官庁の幹部が明かす。
「先生方は、普段通りですよ。西村さんは大臣時代に手がけてきた政策の進捗について、“あれはどうなってるの”“これは?”と矢継ぎ早に聞いてきて、相変わらずの細かさ。世耕さん(弘成・前参院幹事長)も変わった様子はなかった。二階俊博・元幹事長は党の会議で真ん中近くに座っていたけど、“通訳”の林幹雄さんがいないと周りの議員や官僚も近寄りがたいのか、ポツーンと。それもまあ、普段通りです」
ただ、この官僚は「今までと様子が違う人が1人いる」と続ける。
「萩生田光一・前政調会長です。レクをしている間も、ほとんど心ここにあらず。いつもなら“これってどういうこと?”と、結構テンポよく聞かれるんですが、ウン、ウンと言うだけ。“ここからどう巻き返すか”ということを必死で考えているんだと見受けました」
萩生田氏は安倍派「5人衆」の1人だが、政治倫理審査会への出席を免れた。西村氏や高木氏らのように還流のスキームに責任のある事務総長経験者ではない、というのがその理由だ。ただ、派閥からの還流で萩生田氏は5年間に2728万円ものキックバックを受けていたことが明らかになっている。現職議員で3番目に多い額だ。
足もとの党東京都連が2月16日、役員改選を先送りし、萩生田氏の会長続投を決めたのも、「難局に対応できる議員が(他に)いない」という消極的な理由。柴山昌彦氏(埼玉)、野上浩太郎氏(富山)、高鳥修一氏(新潟)と安倍派議員の党県連会長辞任が相次ぐ中で、首の皮一枚で踏み止まったという状況だ。