令和の時代にリバイバルブームとなっている“昭和カルチャー”。なかでも、当時の雰囲気をそのまま残している“昭和レトロ商店街”が人気だ。その道のプロが、もはや“遺跡”ともいえる激シブな商店街を教えてくれる。
昭和50年生まれの山本有さんは、小学生時代から昭和を感じさせる古い商店街の魅力にハマり、全国の商店街を撮り歩いてきた。それらの写真を収録した写真集も出版している。
「初めて訪れた街の古い商店街、ほの暗い通路を進むとぼんやり明かりの灯る鮮魚店や青果店、精肉店などが所狭しと並んでいて、その軒先を歩くだけでもゾクゾクします。かつては大きく栄えたけれどもいまは寂れてしまった姿に、無意識のうちに無常観やノスタルジーを感じるのは、私だけではないでしょう。昭和のデザインや意匠は凝ったものが多く、令和にない独特の魅力がある。歴史が積み重なった佇まいと人の温もり──昭和商店街には、そんな魅力が詰まっていると思います」
そんな山本さんがおすすめするレトロ商店街を紹介する。
●浜マーケット(神奈川県横浜市磯子区)
昭和20年頃から続く歴史ある商店街。全長約140mに約20店舗が連なり、毎月「8・18・27・28日」の特売や、福引やスタンプラリーなどのイベントも開催されている。
「浜マーケットの魅力は、“ザ・商店街遺跡”と呼ぶにふさわしい昔の雰囲気のまま営業を続けながらも、現在も地元客で賑わっていること。“昭和の日常”を追体験できる数少ない場所としてオススメです」(山本さん・以下同)
●ニコニコ通り商店街(青森県青森市古川・新町)
アーケード街のほか市場型、屋台風とさまざまなスタイルが混在する商店街。
「“青森駅前には昭和が生きている”と聞いてはいましたが、実際かなりの数の店が元気に営業していて、昭和レトロの連続に大興奮しました。写真は玩具店。びっしりと玩具がぶら下がり、軒先では駄菓子も売られています。路地には市場型の洋服店があり、店主には昔話をお聞きしました。そうして街の人と交流することで商店街巡りの楽しさは倍増するんです」
●立石仲見世商店街(東京都葛飾区立石)
立石駅北口では再開発が進んでいるものの、南口にある立石仲見世商店街は現在も元気に営業中。大感謝祭を実施するなど、地域の台所として愛されている。
「“せんべろ”店が集まり大衆酒場の聖地として知られる立石ですが、立石仲見世ではアメ横的な生鮮食品店がずらりと並び、買い物客で賑わいを見せていました。シャッターが下りてしまった店もありますが、それもまた味わい。古い手書きの看板だけでも一見の価値ありです」
●四万温泉の商店街(群馬県吾妻郡中之条町)
昭和29年に国民保養温泉地1号に指定され、温泉街として賑わいを見せた四万温泉には、昭和レトロの名残が色濃く残る。
「飲食店や土産物店などこれでもかというくらいレトロな建物が目白押しで、写真を選ぶのに苦労した場所のひとつです。上写真の右手にある『ジョイ』は閉店してしまいましたが、左手の『柳屋』はいまも営業。スマートボールの台もほぼ現役で、チューリップの形をした照明や扇風機など、昭和感に溢れています」
●京阪トップ商店街(大阪府寝屋川市萱島)
昭和30年代の風景をそのまま残しているといわれる、京阪トップ商店街。
「全国でもレトロ度はトップクラスだと勝手に思っている、激シブ商店街です。特徴はなんといっても張り巡らされた万国旗。ぶら下がるシャンデリアのような電灯もたまりません。ほの暗さはあるものの、屋根の上部が明かり取りになっていて、そこまで暗さを感じず歩けますよ。閉店した店も目立ちますが現役の店舗もあるので、機会があれば訪問して欲しいですね」
●七曲商店街(和歌山県和歌山市東長町)
明治時代から“和歌山市の台所”として知られる七曲市場は、昭和の時代「年末のテレビ中継」でお馴染みだったという。市場に併設された七曲商店街もまた、最盛期の昭和35年には100店舗が軒を連ねた昭和を代表する場所だった。
「訪問した当時でも約30軒が営業。昭和31年創業の老舗鮮魚店や、電気店、洋品店などひと通り揃っている印象でした。パノラマ的に書かれた看板の文字など、見どころもたくさん」