自分たちの店へ客を誘う客引き、俗に「キャッチ」と呼ばれる路上など公共の場所での飲食店や風俗店への勧誘は迷惑行為として禁止され、処罰対象になっている。特に繁華街でのキャッチは、ぼったくり店舗への誘導になっていることが多く忌み嫌われているはずなのだが、いつまでも被害者がいなくならない。ライターの森鷹久氏が、今も被害を出し続けるキャッチ利用店舗と、キャッチ経験者に実態を聞いた。
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「みなさん、今日はお飲みですか? お店、もう決まってますか? タバコもお席で吸えます!」
2月下旬の夕刻、東京・歌舞伎町の歓楽街を歩いていた筆者たちは、料理人よろしく前掛け姿にメニュー表を持った若い男に声をかけられた。東京都の条例で禁止されている「路上での声かけ」を行う、違法な「キャッチ」だ。筆者は、思わず「おたくは”トリキ”じゃないの?」と意地悪な質問をぶつけたが、男は「それはパクられるんで」と苦笑いするばかり。大手紙の警視庁担当記者が解説する。
「”トリキ”と呼ばれる人気の焼鳥居酒屋チェーン店『鳥貴族』を騙った違法キャッチが逮捕されました。トリキは人気店で席を取るのも難しいとされていましたが、逮捕されたキャッチたちはトリキの近くで、店に入れなかった客たちに声をかけ、トリキの系列店であるなど嘘をついて、別の店に案内していたとみられています。摘発後、トリキを騙るキャッチはいなくなったものの、悪質なキャッチは今も普通に歓楽街に立っています」(大手紙警視庁担当記者)
客が来るのにキャッチと契約
筆者は2017年、2020年ごろにそれぞれ、悪質なキャッチが繁華街で暗躍していること、キャッチに連れていかれる店が「プチぼったくり店」であることについて記事を書いたが、あれから今日に至るまで、キャッチの撲滅には至っていない。それどころか、道ゆく酔客の腕を引っ張って店に連れていくなどの、昔ながらの強引なキャッチはもちろんのこと、一般客のふりをしてキャッチをしたり、若い女性キャッチらの色仕掛けによる誘引など、手口は多様化し続けているのが現状だ。
一方、こうした悪質なキャッチはことあるごとに逮捕され、その都度報じられたりもしている。「キャッチが違法である」という自治体や警察当局によるアナウンスも頻繁に行われているため、キャッチになろう、と考える人々は減少しそうなものではある。にもかかわらず、なぜ今なお繁華街にキャッチが立ち続けているのか。かつて、集客のために違法キャッチと「契約」をした経験があるという、元居酒屋店経営者の原島伸治さん(仮名・40代)が、自身の経験を明かす。