「キャッチ本人は、個人だったりグループに属していることもありますが、店と書面で契約したりしていることはなく、ほとんどが口約束。1人でも店に連れて行けば、客がほとんど飲み食いしなくても、キャッチにはいくらかの報酬が必ず発生する仕組みになっていました。その手の店は、席料や週末代金、お通し代が必ずかかるようになっていて、これだけで一人当たり3000円くらいの売り上げになる。要するに、キャッチに連れていかれる店では、キャッチの取り分まで料金に含まれている状態で、明らかに割高。そういうマインドでやっている店だから、食事だってひどいのです」(原島さん)
原島さんの店では、週末になると多い時で2~3人のキャッチを使ったというが、何も客不足に悩む原島さんがキャッチを連れてきたのではない。キャッチを使えという指示は、なんと本社から下ってきた業務命令だったという。
「キャッチにお願いをする店があるからキャッチが存在する、ということに気がついた方が良いです。そもそも違法キャッチを使う店ですから、まともな商売をやっていない可能性が非常に高い。うちの店も、本社のエライさんがキャッチと結託し、誰でも彼でも客を引っ張ってきては、酔客が気づかない程度のぼったくりを繰り返したんです。店名を偽ったり、同じ店なのに複数の屋号を勝手に掲げたりしていました。キャッチに関わりだしてからは、まともな飲食業とは呼べないような状態になり、いつか食中毒などの大きな事故を起こすと思い、私は逃げるように辞めたんです」(原島さん)
店の評判がかんばしくなくても、キャッチで客を連れてきて店の運営を無理に続けることは可能だろうが、もし食中毒を起こしたと保健所に報告されたら、立ち入り検査から営業停止や禁止などの処分がくだされる。真面目に営業していたのに起きた事故なのではなく、そもそもまともな運営管理をするつもりがない店舗が立ち直るのは難しい。そんな店に関わっていたとの評判がついて回るのは、まともに飲食業で仕事をしていくつもりなら、絶対に避けたいと考えるのが普通だろう。
罪悪感がない元キャッチたち
違法キャッチや違法キャッチを使う飲食店などの界隈には、確かに反社会的な人物が暗躍していることも多い。では、キャッチや飲食店が暴力団関係者かというと、全てがそうとも言い切れない。千葉県内の某繁華街で、つい半年前までキャッチをしていたという会社員・中村和希さん(仮名・30代)が振り返る。