自民党内や霞が関で「6月に解散するのではないか」との見立てが有力なシナリオとして語られている。4月解散の可能性について岸田文雄首相は「全く考えていない」と否定したが、6月解散説の現実味とは──。
4月解散説が出るのは、裏金問題を受けた政治改革を掲げて行なわれるのではないか、という政局的な観測から出てきたものだ。これに対して6月解散説の根拠は、岸田首相が旗を振ってきた「デフレ克服」という政策の実績を追い風にして解散に打って出るのではないかという見方だ。経済官庁の幹部がいう。
「首相がこだわるのは賃上げの一点です。財界に対する働きかけは安倍・菅政権をしのぐほどで、公取(公正取引委員会)を使って、下請け企業との取引で不当に支払い額を引き下げたとして日産に対して勧告まで出した。中小企業にまで賃上げを波及させるのに妨げになる商慣習を行なっていた大手企業を名指しで批判したかたちで、なりふり構わない熱の入れようです」
3月13日には賃上げを要求した主要労働組合に対する集中回答日を迎える。そこで物価上昇に見合う賃上げが実現され、2%の物価安定の目標について日本銀行が「持続的・安定的に実現できる」と判断すれば、長年続いてきた金融緩和から利上げに向け一歩踏み出す可能性が高まる。
「関係者の間で金融政策正常化に向けた判断のXデーとして有力視されているのは4月25、26日の金融政策決定会合です。その前の3月18、19日だと早過ぎでしょう。急ぎ過ぎて経済を冷やしてしまい、デフレ逆戻りの戦犯のようにいわれた2006年の利上げの時の反省を日銀は重く受け止めているはず。ただ、逆に4月を逃すと次の金融政策決定会合は2か月後の6月まで待たなければいけなくなります」(前出・経済官庁幹部)