【週刊ポスト連載・医心伝身】医師の処方箋があっても薬局などで必要な薬が手に入らない状況が続いている。特に供給不足なのが、鎮咳剤や一部の抗菌薬、てんかん薬などだ。薬価引き下げで採算が合わない医薬品の製造を止めるメーカーがあることに加え、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事も重なり、医薬品不足が深刻化。薬局では別メーカーの薬への変更や薬局間で薬を融通するなどの対応に追われている。
日本製薬団体連合会が、2023年12月に調査したところ、出荷停止や限定出荷の医薬品は全体の約26%を占めた。中でも懸念すべき問題なのが、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の供給不足だ。
ジェネリック医薬品といえば、2020年12月に発覚した医薬品メーカー・小林化工での抗菌薬に睡眠導入剤が混入した事件。この事件で小林化工には業務停止の行政処分が下され、医薬品の供給不足は、より深刻さを増した。
このように医薬品の供給が不安定なのは最近のことではなく、以前からすでに始まっていたと指摘するのは薬剤師の児島悠史氏。
「高齢化社会を迎え医療費が膨らむ中で、医療費削減の一環として薬価の引き下げが行なわれてきました。結果、製造しても採算割れを起こす医薬品も登場し、製薬会社が製造を止める事態になっているのが現状です。こうした医薬品の供給不足下で、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事も相次ぎ、一層安定供給が難しくなっています」
特に供給不足が顕著なのが鎮咳薬だ。慢性的な咳の患者だけでなく、コロナやインフルエンザの感染者に対しても処方されるが、まったく足りていない。薬局に在庫がないせいで、患者は何軒もの薬局を回らなければ手に入らない状況も起きている。
この厳しい薬不足に対し、厚生労働省は製薬メーカーに補助金を出して増産を促しているが、いまだ不足解消には至っていない。