警察庁の発表によると、SNS型投資詐欺の2023年の被害額は約277億9000万円(2271件)で、ロマンス詐欺は約177億3000万円(1575件)と、計約455億円に上る。これは、約441億円の特殊詐欺より多い被害額だ。なぜこれほど増えているのか。ロマンス詐欺、SNS型投資詐欺の実態と背景について、ネット関連の事件や詐欺事件に詳しい成蹊大学客員教授高橋暁子さんに聞いた。
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「『愛している、君は特別な人』と言われて舞い上がってしまった。『もうこの人を逃したら次はない』と思いこんでしまって…」。そう言って、40代女性は肩を落とす。
婚活に失敗続きだった彼女はある日、Instagramで日系中国人を名乗る会社役員の男性からメッセージを受け取った。クルーザーに乗った写真がスマートで、まめな連絡にすぐに夢中に。男性から「二人の将来のためにお金を増やそう」と投資を勧められ、ネット口座に貯金約700万円を送金した。相談した友人に「詐欺ではないか」と言われ、被害に気づいたという。
このように、外国人や海外在住者を名乗り、SNSやマッチングアプリ等のやり取りで恋愛感情や親近感を抱かせ、金銭等を騙し取る詐欺が「ロマンス詐欺」だ。ロマンス詐欺の多くでも投資が搾取の名目となっているのが特徴だ。もちろん、優良な投資情報だと信じさせることから始まったSNS型詐欺もある。
定年退職後も何らかの形で収入を得たいと考えていた60代の男性は、知らないLINEグループに追加されたことをきっかけに、予想外の事態に巻き込まれた。本も出している有名な人の主催する投資グループで、熱気があり盛り上がっていた。ほかの参加者に勧誘されて、外国為替証拠金取引(FX取引)を行う投資アプリをインストール。約5000万円を入金し、見た目は儲かっているように見えたが、出金できずに詐欺と気付いたそうだ。
「老後の資金を増やしたかった。著名な人が教えてくれるし、参加者もみんな儲かっていると言っていたから信じたのに…」と、男性は肩を落とす。
いずれの被害者も、仕事でも評価され、うっかりしている人という印象はない。きっと、旧来のセミナー商法や訪問販売などで、詐欺や詐欺まがい商品にお金を払ってしまうようなことはしないだろうと思わせる。だが、そんな人でも被害に遭うのがSNS型詐欺の大きな特徴だ。