ある中堅親方は「浅香山親方が難色を示すのも当然だ」と話す。
「部屋の合併では問題が起きやすい。二子山部屋と藤島部屋の合併(1993年)のケースでは、ガチンコとそれ以外のせめぎ合いがあった。生き残ったのはガチンコ力士だったが、部屋の中でゴタゴタがなくなるまで2年近くかかっている。
2010年、木瀬部屋が北の湖部屋に移った時は、木瀬部屋の27力士と、行司、呼び出し、床山の各1人ずつ、全30人が北の湖部屋に移籍した。角界最大46人の力士を抱えることになり、稽古も宿舎も大変な状況だった。北の湖理事長が重しになっていたが、それでもジョージア出身の臥牙丸の扱いに苦慮した」
今回の浅香山部屋と宮城野部屋のケースでは、いつまで合併状態が続くのか、ということも定かでない。前出・中堅親方が続ける。
「長期になれば水が合わずに辞める力士が続出する可能性がある。宮城野部屋は3月場所に宝香鵬、雷鵬、輝鵬、炎鵬、竹葉が休場しているが、すでにケガの炎鵬以外は場所後の引退も囁かれる。それでも床山や行司、呼び出しの裏方を含めて20人近い宮城野部屋一行が、力士9人の浅香山部屋に押しかけるかたちになってしまう。
浅香山部屋には元十両の魁勝も含めた幕下力士が5人いるが、比較的おとなしい力士ばかり。宮城野部屋には十両の伯桜鵬がおり、合併すれば部屋頭になる。各部屋で稽古の仕方も違うし、しきたりも違う。大勢が押しかけてくるのはやはり恐怖しかないと思う。そして何より、誰よりも現役時代の数字を残した元横綱の白鵬が部屋付き親方になるのだから、取り仕切る浅香山親方も相当やりにくいでしょうね」
協会から支給される部屋維持費、稽古場維持費、力士養成費などは所属力士ひとりにつき年間180万円。それは移籍先の親方に支給されることになるわけだが、その金額が押し寄せるゴタゴタに見合うかどうかは、定かではない。
※週刊ポスト2024年4月5日号