注がれた酒を一息に飲み干す「イッキ飲み」(イメージ、時事通信フォト)

注がれた酒を一息に飲み干す「イッキ飲み」(イメージ、時事通信フォト)

 そうでない節度ある人も当然いるだろうが、まあ日本、とくに地方(筆者の父方の故郷である九州など)はとくに酒に甘いとされる。昭和の時代は飲酒運転だって祭りや盆暮れともなれば「普通」だった。

「いまだって地方はそんなもんです。うちの田舎の支店なんか酒が飲めなきゃ人権がない状態です。そもそも地域の自営業とかのお客さん方がそうなんですから。地元消防団なんかいまでも一気飲み競争で潰すのが当たり前、令和でも見えないところでそんな状態です」

 お酒の飲めない、飲めてもそういう飲み方をしたくない、酒は好きだが会社の飲み会は勘弁という方々にとっては最悪だろう。「一気飲み」に至ってはそもそも健康問題もあるし、死亡事故につながる危険性もある。実際にこれまで死亡事故があり、毎年報じられているがなくなる気配がない。

 一気飲みが爆発的に流行したのは1980年代とされる(イッキ飲み防止連絡協議会調べ)。〈飲めぬ下戸にはヤキ入れて〉という秋元康作詞、とんねるずが歌った『一気!』という曲が流行ったころである(1984年)。双方の因果関係はともかく、そういう時代だったことは事実であり、いまも形を変えて日本各地で続いている。

 当時、1991年には朝日新聞に〈強制的に飲ませて、苦しむ姿を楽しんだり、酒に強いことが人間の優秀性、豪傑性を示すとするような錯覚が、若い人たちに広がっています〉と警鐘を鳴らす読者投稿が載った。投稿者は塩川正十郎、のちに小泉内閣時代に「塩爺」と呼ばれ愛された国会議員が、社会問題となっていた一気飲みによる死亡事故を憂いて一市民として筆をとった。それでも一向に無くならない。

 千葉県の元甲子園球児、同県の大学でも野球部に所属した40代会社員も語る。

「部活に酒は当たり前でした。ええ、高校生だからだめですよ。でも私らの時代は子どもでも酒が買えたし、まあ地域全体が「酒くらい」という時代でしたからね。正月とか「飲んでみろや」で面白がる親戚のおじさんとか普通にいた時代です。野球部でも先輩は当たり前に飲んでました」

 しかし実のところこうした事例、令和の現代でも部活動やサークルなどに現在進行系の話である。

 直近では東海大学野球部、関西大学アメフト部、神戸大学バドミントンサークル、花咲徳栄高校野球部、新湊高校野球部と未成年飲酒や強要、それに伴う暴力行為、破壊行為などの不祥事が明るみとなっている。というか、こちらも毎年珍しくもなく日本全国で行われている。むしろSNSによって広まる状況にある。

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