「褒められてるんですけど、女性どうしの人間関係をネガティブなものだと思ってほしくないという気持ちもすごく強くて。うまくいかない時期や別離を書くと、『ドロドロ』『女は怖い』って絶対言われちゃうから、あえてそこのところを書かない作品を書いたりもしたんです。
この10年間の私の一番の悩みだったんですけど、『BUTTER』という作品がドイツとイギリスで翻訳されたら、『私、フェミニストとマーガリンが嫌いなの』っていうキャッチコピーだったんです。自分が書いたセリフなんですけど、『めっちゃカッコイイじゃん』って思ったんですよ。『女どうしのドロドロ書かせたら一番』って売り方じゃなくてもいいんだって。要は、場所が変わると自分の悩みがなくなる可能性があるとわかって人生観も変わったし、自分はこれまで少なからずやりたいことをやらないできたんだなということにも気づいて、これから書きたいものを書いていく勇気が出ました」
女性アーティストが亡くなり、親友の女性が彼女を有名にするためその死を偽装するという、前々から書きたかったドラマティックな設定の小説に近く取りかかる予定だという。
【プロフィール】
柚木麻子(ゆずき・あさこ)/1981年東京生まれ。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、2010年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。ほかに『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『その手をにぎりたい』『本屋さんのダイアナ』『マジカルグランマ』『BUTTER』『らんたん』『ついでにジェントルメン』『オール・ノット』など多数。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2024年4月11日号