額から流れる汗を気にもせず、ストップウォッチ片手にひとり走る──。パ・リーグ最年長選手、福岡ソフトバンクホークスの和田毅は、2024年2月に43歳を迎えた。不惑を超えてなお最前線で活躍し続けることで、“球界のレジェンド”とも呼ばれる大ベテランが、シーズン開幕を前にしてピンチに陥っている。
今季からチームの指揮を執る小久保裕紀新監督は就任早々、和田に開幕ローテーション内定を告げた。ところが2月にキャンプインしてもなかなか調整のペースが上がらない。開幕前にオープン戦を含め対外試合で5度登板したが、一度も結果を残せなかった。
精神的な問題なのか。それとも年齢による身体的な問題なのか──。開幕直前に話を聞かせてくれたベテランの左腕は、意外にも明るい表情で不調の原因を「投球フォームのメカニックな問題」と説明した。
「昨年と比べて投球フォームが少し変わっていました。登板翌日に体の張りがなく、肩だけ重く感じる。張りがないのは体をちゃんと使えていない証拠ですが、原因が分からなかった。だから当初は困惑しましたね」
投球フォームを修正する上で、その原因を特定することが最も大切な作業だという。
「肩の可動域は毎日計測していますし、上半身の旋回率も変化はない。ウェイトトレーニングの最大負荷はむしろ上がっている。肉体的な衰えとは考えにくかった。つまり、純粋なメカニックの問題だと判断したんです」