“差別発言”の騒動をめぐり、辞職願を提出した川勝平太・静岡県知事(75)。「オレならあんなことは言わない」と思っている人ほど、実は無自覚のうちに周囲を傷つける言動を取っていることが少なくないという。
「野菜を売ったり、牛の世話をしたりとかいうことと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」
入庁式での訓示を批判された川勝氏は当初、「職業差別は皆無」「誤解は解ける」としていたが、批判に抗しきれずに辞任を表明。発言も撤回に追い込まれた。
『職場を腐らせる人たち』(講談社現代新書)など人間心理に関する多くの著作がある精神科医の片田珠美氏は、「川勝発言」の裏にある「無自覚のゆがんだ意識」の危うさを指摘する。
「川勝氏は名門高校、大学を出てイギリスの大学で学位を取り、大学教授、学長を経て知事になった。実はこのように指導的な立場にある人や、人生経験が豊富な世代ほど自分の認識が社会とズレていることに気づけず、無自覚に問題発言をしてしまうケースがあるのです。“昔の価値観も現在の価値観も自分は十分理解できている”とわかったつもりでいることにより、失敗を引き起こしてしまう。たとえるなら相手に気持ちを伝える送信機はあるが、受け止める受信機の性能が低いのです」
川勝氏の事例以外にも社会的立場の高い人が失言で周囲を傷つけるケースは散見されるが、「無自覚であるからこそ気をつけてほしい」(以下、「 」内は片田氏)という。