表題はこれまで騙し騙し住んできた家を〈中も、外も、解体するしかない〉とした決断にちなみ、事件によって数々の嘘が暴かれ、家族をいよいよ裸にしていく様は、息がつまるほど。
「この父親もそうですけど、世の中、オジサンを悪者にすれば丸く収まるみたいな風潮があるじゃないですか。ただそのオジサンにも少年時代は当然あって、傷つく時は傷つくし、不適切写真が出た疑惑の政治家も少年部分が出ちゃったのかなあって僕はつい思っちゃうんですよね。擁護はもちろんできませんけど。
とにかく家族ですら推し量れないものがある以上、ちょっと落ち着こうよって。僕は漫画の原作も書くんですけど、エピソード1つで彼は悪人で彼はイイやつと、評価が極端に変わったり、悪評=悪人と思う人がいたり、判断を保留することの大事さを痛感しているので、今でもこの本がどう読まれるのか、正直ドキドキです」
家族が良きものであろうとなかろうと、一旦解散し、またそこから始めるのも、選択肢としては十分ありだ。
【プロフィール】
浅倉秋成(あさくら・あきなり)/1989年生まれ。千葉県出身。大学卒業後、会社員を経て、2012年に『ノワール・レヴナント』で第13回講談社BOX新人賞Powersを受賞し作家デビュー。2019年の『教室が、ひとりになるまで』や2021年の『六人の嘘つきな大学生』、2022年の『俺ではない炎上』は多くの文学賞の候補となり、各ミステリーランキングでも上位に。また現在『ジャンプSQ.』で連載中の『ショーハショーテン!』(作画・小畑健)など、漫画原作者としても活躍。173cm、66kg、A型。
構成/橋本紀子
※週刊ポスト2024年4月26日号