優しい家庭的な人
引退後、年寄・曙として東関部屋の部屋付き親方になった後も、年寄株取得の話がなかったわけではないという。前出・ベテラン記者が続ける。
「所属する一門の統帥である『高砂』の襲名の可能性もあった。2002年3月に定年を迎えた当時の高砂親方(元小結・富士錦)が後継者に指名した水戸泉(元関脇、現・錦戸親方)が断わり、名門部屋を継ぐものがいなくなった。そこで、曙に部屋の後援会ごと継承させるプランが浮上したが、一門の親方衆の猛反対に遭った。そこにはまだ、外国出身で若い曙が一門の統帥たる株を襲名することに抵抗が大きいということでしょう」
退職は、角界のしきたりに押し出された形だった。ただ、師匠や後援会幹部の反対を押し切って選んだクリスティーン麗子さんとは、温かい家庭を築いた。
「若貴もそうだが、妻がおかみさんになることが半ば前提の結婚の後に角界を離れると離婚をするケースが多いなか、曙と夫人は最後まで一緒だったし、結婚後は浮ついた話も出なかった。ヒール役のイメージが強いが、曙を知っている人は気の優しい家庭的な人だと言う。繊細で周りに気を配る人として評価されていました」(前出・相撲担当記者)
※週刊ポスト2024年5月3・10日号